中山間地集落の将来像をどう描くか

 「9月になると基金が積み立てられるのはなぜ?-補正予算を読む-」で紹介した補正予算から、「小規模集落元気度調査」について次のように記しました。

人口減少に伴い、集落の運営も難しくなっていきます。活性化という目線だけではなく、縮減していく村の将来をどう描いていくか、そうした政策へのヒントになるデータが得られればと願っています。

 今回はこの点についてもう少し踏み込みます。あわせて、これからの集落をどう経営していくか、入口となる考察を。

T型集落点検とネットワーク型集落像

 ぼくが調査と聞いて縮減を前提とした集落のあり方に関心がいったのは、「T型集落点検」が頭の片隅にあったからです。

 T型集落点検は、熊本大学徳野貞雄教授が取り組まれてきた調査。
 基本となるのは、集落をそれ単独として見るのではなく、外に出て働いている子どもたちも含めたネットワークとして見ようとする考え方です。

 従って調査としては、これまでのように単純に集落内の年齢構成や世帯数などを調べるだけではなく、出身の子どもたち(他出子)の状況、農業以外の複業の状況、交通手段や生活圏の変化などを幅広く調査します。

 丹波市でも、たとえば田植えや稲刈りには都会に出ている子どもが助けに帰ってきているなどの状況はありますよね。
 集落というのを、こうした外部との往来のあるものとして見る。そうした往来が集落を支えているのであれば、行政はその往来を支援することで、集落の維持を図るという考え方ができる。

 これはぼくなりの表現にはなりますが、こうした「ネットワーク的な集落像」は、政策の方向性として意識しておきたいと思っています。

他自治体における集落実態調査

 とはいえ。T型集落点検とまでなるとこれは大変です。

 他の自治体における集落実態調査ってどうなっているんだろうと思って調べてみると、結構あるのですね。

 今回の兵庫県における調査も、これらと同様の内容かと思います。

兵庫県が行う小規模集落元気度調査

 今回の調査事業、そもそもは兵庫県の「地域再生大作戦」が背景にあります。

 県が定義する小規模集落というのは、世帯数が50世帯以下、住民の高齢化率が40%以上となっている集落です。
 丹波市内では47自治会がそれに相当するとのこと(自治会数は全299自治会あります)。

 今回はそのうち19自治会が調査対象。県からの補助対象は15自治会ですが、青垣の遠阪地域の集落はすべて調査しようということで、市独自で遠阪地域の4自治会を追加しています。

 調査の内容は住民へのアンケートと自治会長へのヒアリング。統計データとして集計するほか、小規模集落カルテ及び調査結果報告書としてアウトプットされます。

 「元気度調査」と名称がついているところもミソかもしれません。
 この用語は、兵庫県立大学の助言を得て編み出された兵庫県独自の考え方のようです。

集落の元気度とは何か

 兵庫県立大学の協力を得て行われた「地域再生大作戦の取組成果の調査及び評価」に、集落の活動状況を計測する評価表が掲載されています。

 地域再生大作戦において集落がどのような状況になると良いと考えているかを知る手がかりになりますので、一部を抜粋して紹介します。
 段階表示があるのは、数字が大きくなるほど成長していると見ます。

  1. 地域運営計画の実施
    計画作成がきっかけで始動した取り組みがある(1段階)
    計画作成がきっかけで始動した取り組みが今も継続している(2段階)
    ひとつの取り組みが発展して新しい取り組みにつながった(3段階)
    自主財源で取り組みが維持できている(4段階)
  2. 特産品ビジネス
    特産品開発の話し合いを始めている(1段階)
    特産品を開発した(2段階)
    開発した特産品の販売を始めた(3段階)
    特産品の販売ルートを複数に拡げた(4段階)
    特産品にリピーターができた(4段階)
  3. 地域内交流
    積極的に住民へ地域の活動の参加を呼びかけている(1段階)
    活動に参加する人が増えた(2段階)
    子供からお年寄りまでの多世代の交流が増えた(3段階)
    女性が地域の活動に参加した(3段階)
    若者が地域の活動に参加した(3段階)
    女性の意見を取り入れ,活動に反映した(4段階)
    若い世代の意見を取り入れ,活動に反映した(4段階)
    活動主体の世代間の継承ができている(5段階)
  4. 地域外交流
    地域外に向けた取り組みを行い地域外の人が訪れた(1段階)
    一年を通して地域外向けの取り組みを実施している(2段階)
    地域住民が地域外の人との交流に抵抗がなくなった(2段階)
    外部からの訪問者が年々増加している(3段階)
    定期的に地域を訪れる訪問者(リピーター)がいる(4段階)
    先進事例として他地域からの視察を受け入れている(4段階)
    都市地域との相互交流を行なっている(4段階)
    地域外の人で地域活動のサポートをしている人がいる(5段階)
    地域外交流がきっかけで地域に移住した人がいる(5段階)

 推測するに今回の「元気度調査」は、集落内での自主的な活動、特に特産品であったり都市農村交流であったりが行われ、多世代及び多様な人が関わっていくような姿を想定しているものと考えます。

けっして明るくない集落の将来像

 以上紹介した集落の「元気度」はひとつ重要な視点として。

 もうひとつ、人口が縮減していく中で、集落機能を維持できるかどうか、真剣に考えておくべき時期に来ているように思います。
 この場合の集落機能という中で特に心配になるのは、次のような点でしょうか。

  • 里山環境の保全
    総出で行う「日役」による環境整備がいつまで可能か。
  • 高齢者コミュニティの維持
    近所の誰それと井戸端会議をする機会が失われないか。
  • 文化の伝承
    村祭りなどの行事が行えなくなるのではないか。

 どういうことかというと、これからの丹波市では「世帯減少」がはじまるという話です。

 これまでの丹波市は、人口は減少しつつ世帯数は増加していました。若い世帯が実家を出て世帯を分け、中心部のアパート等に転出したりしたからですね。大家族から核家族への変化と言っていいかもしれません。
 たとえば令和2年度から令和3年度にかけての3月末現在で比べると、丹波市全体での世帯数は103世帯増えて26,057世帯(人口は720人減の62,939人)です。

 その結果、もともと実家のあった周縁部では高齢者だけの世帯が増えた。
 そうした方々が高齢化し、やがて独居世帯になり、空き家になっていく。

 この現象はすでに起こっている現象です。丹波市全体で世帯数が103世帯増えた上記の期間を、小学校区別で見てみましょう(一部抜粋)。

  • 青垣小学校区 2,407→2,400
  • 上久下小学校区 546→542
  • 船城小学校区 552→537
  • 三輪小学校区 670→666

 小学校区で見れば、世帯数が減っているところもあるのです。

 そうなると、集落を構成する世帯そのものが減っていく。結果として、これまで共同で担ってきた集落維持機能が失われることになる。

小規模多機能自治とネットワーク型集落

 こうした状況を予測して、対応策として進められてきた取り組みに「小規模多機能自治」があります。

 小規模多機能自治というのは、「おおむね小学校区単位(歩ける距離)」で、「さまざまな機能(分野横断)」を、「住民の参画と協働」で行っていこうとするもの。
 丹波市でこの10年ほど小学校区単位で「自治協議会」が作られていった背景にも、この考え方があるものと理解しています。

 集落機能が失われていく中、それを市が代替することは財政的にできません。自治機能に期待しつつ、補完できるように備える必要がある。

 で、ここから先は、たとえば神山町の「創造的過疎」の考え方や、以前意見交換させていただいた大阪市大の松永桂子先生の論考なども参考にしながら考えていくわけですが、もうひとつ、これは福祉分野の「地域包括ケアシステム」で、「互助」という言葉が明記されるようになっていることも注目しておきたいと思います。

 厚生労働省の報告書から「地域包括ケアシステムの5つの構成要素と自助・互助・共助・公助」に分かりやすいですが、「公助」は税による負担、「共助」は介護保険などの仕組み、「自助」は自分や市場経済による仕組み。
 これに対して、「互助」を費用負担が制度的に裏付けられていない、いわゆるボランティアや住民組織等によるものと位置付けています。

 小規模多機能自治に期待されるのは「互助」ですね。

 で、そのあり方を考えるとき。「創造的過疎」では、人口減少は所与のものとして、その中身を若者や創造的な人材を増やすなど人口構成の健全化を目指します。
 また、中国地方での現地調査を経て今は大阪市大で教鞭をとられている松永先生は、トリノなど海外事例も踏まえつつ、ワークライフバランスなど新しい価値観に基づく人口移動に注目されています。

 これらの考え方は、今回の「元気度調査」と重なってくるものと思います。

 そうした延長に、冒頭で述べたネットワーク型の集落のあり方を重ねて、将来の集落像を描けないか。
 気になるのはこの先ですが、すみません、まだ生煮えなので、ここから先はあらためてにさせていただきます。

“中山間地集落の将来像をどう描くか” への2件のコメント

  1. こんにちは!いつもありがとうございます。
    当社のパラグライダー事業では、地域外交流1~5段階を少しずつではありますが着実に達成していっていると自負しています。青垣は世帯減少となっているようですが、ここ1~2ヶ月でも、姫路市の女性フライヤーが沢野の住宅を購入、豊中市のフライヤーご一家3名が大名草の住宅を賃借されまして、元気度はかなり高いと思います。
    今後の問題点なども自分なりに考えていたり、地域再生事業と何か噛み合うところがないか、いつも考えているのですが、なかなか手出しができずにおります。
    また小橋さんとお話できる機会があればと思っています。

  2. パラグライダーは本当に貴重な地域資源ですし、そこに人が集まってきてくれるのは、今取り組んでいただいている皆さんあってのこと。「過疎法」のエントリーでも触れましたが、それを活かす戦略が市には求められていると思います。ぜひまた今度!

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