丹波市における農地転用の現状
よく耳にする「農地転用」。正式には「農地法」に基づく許可申請についてご紹介します。
制度の全般的なことについては、農林水産省「農地転用許可制度について」に詳しいです。
丹波市では旧町域ごとに審査が行われています。申請締切は毎月5日。
申請をもとに地域委員会が開かれ、現地確認を行うのが毎月半ば頃。その後、25日に全市の定例総会が行われ、地域ごとに審査した結果を全体で承認する流れです。
だから、申請からおよそ1カ月で許可がおります。
ただし農地を農地以外の用途で利用する(太陽光発電にしたり宅地や店舗にしたり)場合は県の許可が必要です(詳細は後述)。総会の後、県に申請が回されますので、さらに1カ月余分にかかります。
ちなみに令和元年度の申請件数は以下の通り。毎月50件程度処理しなくてはいけないということですね。6地域に分けたとしても、とても1日で現地確認できる量ではなさそうです。
案件 | 件数 | 筆数 | 面積(平方メートル) |
---|---|---|---|
第3条申請 | 215 | 446 | 375,390 |
第4条申請 | 25 | 32 | 19,909 |
第5条申請 | 133 | 243 | 121,748 |
非農地証明申請 | 105 | 178 | 43,787 |
合計 | 478 | 899 | 560,134 |
丹波市の農地面積5,500ヘクタールからすれば、毎年1%くらいが転用されていることになりますね。
農地転用と農地法
で。この第〇条申請ってなんじゃい、ということですが。これ、「農地法」です。3条は市の農業委員会による許可、4条と5条は県の許可ということになっています。
■第3条
農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。
農地を売ったり買ったりする場合は、農業委員会の許可が必要ということです。
法律上は賃貸借も含まれますが、丹波市の場合、農家さん同士での賃貸借ということはあまりなく、通常は利用権設定という別の手続きをされているそうです。
第3条に基づく許可は市の農業委員会が行います。農地が売買された後も確かに農地として利用されることを確かめて、許可がおります。
■第4条
農地を農地以外のものにする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。
これは自分の農地を農地以外の目的で利用する場合に必要な手続きです。県の管轄です。
条文の途中を省略しましたが、「農地転用許可権限等に係る指定市町村の指定」で指定されている市町村は、都道府県ではなく市町村の許可で転用が可能となります。兵庫県で指定されているのは神戸市と明石市のみです。
■第5条
農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のものにするため、これらの土地について第三条第一項本文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合には、当事者が都道府県知事等の許可を受けなければならない。
こちらも県の管轄です。第4条と違って権利移動を伴う場合。つまり、農家さんの農地を他人が譲り受け、農地以外の用途で利用するケースです。
休耕田になっているようだから農地を取得して太陽光発電施設にしたいとか、畑を宅地化して家を建てたいとか。そんな場合ですね。
農地転用、許可と不許可の境界は?
さて、ここまでくると、気になるのは農地転用が許可される場合とされない場合、どこで線引きされるかってこと。
丹波市の場合「申請者主義」と呼ばれているようですが、できるだけ申請者の思いに応えることを前提に事務が行われています。
だって申請される方は、自分の暮らしをかけて農地の転用を願われている。まずはその思いをくみとることです。
とはいえ、一面の農地のど真ん中に工場や太陽光発電施設を作る、これはさすがにほぼ100%無理です。
まぁ理屈上は不可能じゃないですが、あえてそこである必要があるかが問われます。
工場や太陽光はそこでなくてはならない理由に乏しい。全国探せば他にも適地があるはず。それら適地をすべてあたって、その上でここでしかないなら、その時は認められるかもしれません。
でもさすがにそこまでの調査を申請者ができるはずもない。だから実質的に無理かなと。
この「そこでなくてはいけないか」基準は、あんがい重要です。たとえば「店舗を建てたい」だと、「商売はそこでなくても良いですよね」との疑念があり得ます。
一方で集落に隣接した農地に「住宅を建てたい」と言われれば、暮らすためにはやむなしという理屈が成り立ちます。
農地転用の相談は農業委員会の事務局で受け付けられています。しっかり相談して、いざ農業委員会への申請ができるレベルまで書類が整えば、その後はよほどのことが無い限り、許可されるようです。
農業振興地域と農用地
農業振興地域という言葉を聞いたことがあるでしょうか。県が指定するものです。
丹波市の場合、山際に集落があり川沿いに圃場が広がっている風景が多くみられますよね。この山際にそって農業振興地域の境界が描かれているイメージです。
だから、駅周辺などの市街地を除いて、ざっと見渡した谷間の風景、これすべて農業振興地域に含まれていると考えていいでしょう。
面積にすると1万ヘクタールを超え、農地面積より多いですが、これは道路や集落内の宅地などすべて含むためです。
で。
そこからさらに集落周辺を除いて、多くは(8割程度)土地改良がされている圃場、これが「農用地」として指定されています。面積にして約5,000ヘクタール。
この「農用地」は、原則的に農地転用が認められることはありません(例外はあります)。当然ですよね。仮に農用地が転用されて虫食いのようになってしまったら、農地の効率的運用上不適切です。
こうした農地の集積という視点も、農地転用を考える上で重要な視点です。
なので、農地転用が認められるのは、市街地の範囲内にある農地の他、基本的には集落内にある農地、または集落に隣接している農地だと、ざっくり考えておいてもらったらいいのかなと思います。
3種類の農地
より詳しく言うなら、転用したい農地が次のいずれに該当するかが調査されます。該当する場合は認められる可能性が高いです。
- 公益的施設が整備されている
上下水道が整備されている沿道で、500メートル以内に学校や医療機関、公共施設が2つ以上ある。 - 宅地化が進んでいる
住宅や事業所等が隣接して広がっている。
これらは「第3種農地」とされ、許可できるものとされています。集落内にある田畑が代表例ですね。
一方、上記の2つの条件に今はあてはまらないけれど、そうなる可能性がある場合、ということは、たとえば集落に隣接する農地などは「第2種農地」とされます。
こちらは、原則的には難しいのですが、第3種の農地を探しても見つからない、ここでないと仕方ないという場合は、許可されます。
そして、残る「第1種農地」。これは10ヘクタール以上の規模の農地の区域内であったり、土地改良事業を実施していたり、条件的に農業としての生産性の高い農地が該当します。
ここは原則不許可。ただ、たとえば集落に接続する形で住宅にする場合などは、他に適地が無い場合は認められます。
以上、農業委員会と農地転用についての基礎知識編でした!
24名の内農業従事者でない消費者代表者が、入ってる事ですか?
それは、推進委員ですか?
消費者代表とは限りませんが、農業委員の24名のうちに農業者でない人が含まれている必要があります。意見の多様性を担保するためではないかと。