まちおこしをやっていると、ときどき無力感にとらわれることがある。なるほど、観光収入を増やしたり、農産物のオンライン販売をしたりと、一定の効果を生む事業はあるだろう。成功している地域も少なくない。しかし、それが持続的なまちおこしにつながるのか。結局、大きなところで、東京への一極集中をとめることはできない。そんな風に考える瞬間がある。
先日もある地域情報化の集まりで、ほんとうに地域情報化は成功したのか、と問いかけた。いま、ぼくの地域でもADSLが開通し、光こそ使えないけれど、一応のブロードバンドが利用できるようになった。元気に活動しているNPOもあって、情報発信意欲も低い方ではない。
同じような状況が、日本各地で見られる状況になった。
でも。
地域情報化が進んだこの十年、人口はむしろ地方から離れ、首都圏に流れ込んでいるのが現状だ。
高速道路の開通とともに支店経済が成り立たなくなり、空きオフィスが増える地方都市と同じで、けっきょく地域情報化も、地方の活力とはなり得ていないのではないか。自虐的とも言える、そんな思い。
つまりは、この「国のかたち」が変わらないと、いくら道路を作っても、いくら情報化を進めても、この状況に変化は無いのかもしれない。
そんなことを、最近感じている。
そして、江口さんも言うように、この新しい形として、もっとも気になるのが「道州制」、地域主権型のそれなのだ。
同じ問題意識を抱く人が増えてきているのだろう、このところ道州制論議が徐々に盛り上がりつつある。ただ、なぜ道州制なのか、現在の仕組みとどう違うのか、あるいは現在の県単位での地方分権ではだめなのか、このあたりについての一般的な知識が不足している(ぼくもその一人)。
本書は、そんな現状での、もっとも手にとりやすい入門書といえる。あえて「地域主権型」と明示しているのも快い。
序章で、近い(と願うしかない)将来、道州制が導入された後、それぞれの特色を活かして栄える地域の姿が活写される。まずは理想像から入るこのアプローチはわかりやすい。
道州制とは、安全・外交などの国全体の利益に関わることを除き、地域政府が自律して行政を行う国の姿だ。
地域政府の規模としてはどの程度がいいのか。仮に十二分割する(東京は東京だけで一州とする)と、各道州の平均人口は1,000万人。これは、ギリシアやポルトガルと等しい。さらに一道州あたりのGRPは3,800億ドルで、EU1国あたりの4,500億ドルにこそ及ばないものの、アメリカ1州あたりの2,500億ドルは上回る。
そう考えると、なるほど、道州に国に匹敵する自由度を与え、独自の政策を練ることには合理性がある(ちなみにその中にある基礎自治体の規模は15万?40万人程度がもっとも運営効率が良いという)。
江口さんはこうして道州制の基本を解説した後、現在の「国のかたち」の問題点を述べ、道州制導入までの具体的手順も構想する。
地域の、日本のこれからを考える人に、読んでほしい。