インターネット風景、変わったもの変わらないもの

今ではオンラインショップってごく普通に利用されているけれど、こちらは、まだ草創期と言える時期のインターネットの状況を伝えていると思い、ご紹介します。2000年11月頃、関西消費者協会の機関誌『消費者情報』向けに書いたコラムです。

文章中で、当時利用されていたサービス名称がいくつか出てきますが、そのまま残しておきました。今では別のサービスにとってかわられているものも多いですね。そのあたりの、懐古的な意味も含めて。

そして、この原稿でもまた、都市と地方を比較している。地域と情報の関係を、当時からかなり意識していた様子。

また、この原稿の中で触れている「コミュニケーション」や「コミュニティ」こそ本質、という考え方は、今にも通じると思います。ただ当時、ぼくはこれらの言葉を、個人を可能性に向けて開いていく言葉としてイメージしていました。しかし、今この時代においてのコミュニケーションやコミュニティは、むしろ「ウチワ」的な面もおおいにあり、そこはインターネットが一般化するとともに出てきた、もうひとつの側面であるかもしれません。

生活の中のIT革命

■生活に浸透するオンラインショッピング

ベルの音に玄関に出ると海外からの小荷物だった。来客があるたび戸口まで出てくる2歳半の息子は、さっそく「なに、なに」と開けようとしている。書籍だ。オンライン書店Amazon.comで注文した10冊ばかりの洋書が、海を越えていま子どもの手の中にある。

子育てをしながら家庭で仕事をしていると、ゆっくり買物をする時間をとれることがあまりない。子連れで書店に出かけても、絵本コーナーに行きたがる子どもに手をひかれ、のんびり選ぶ暇なんてあればこそ。そんなわけで、在宅勤務をはじめてからの2年余り、すっかりオンラインショップのとりこになってしまった。

いま、日本における自宅からのインターネット利用者は2000万人弱。そのうちオンラインショッピングの経験率は15%強というから、自宅のパソコンでオンラインショッピングを経験した人は約300万人ということになる。これをひとつの商圏と考えれば、大阪や神戸といった都市の人口を優に上回る。全人口からの比率としてはまだ少数派とはいえ、いつしかそれなりの市場に育っている。

売れている商品を見ても、一時期のコンピュータと周辺機器ばかりという時代は過ぎ、いま日本では衣料品や食品が人気の分野だ。この1年、女性の購買客の増加が目立ち、オンラインショッピングはすっかり日常風景になった感がある。

 

■関連サービスも続々登場

オンラインショップのにぎわいとともに、買物に関連する分野にもさまざまなサービスが登場している。

なかでも注目されるのが、消費者による商品の評価情報を集めたサイト。「WAAG」「PTP」といったサイトがそれで、実際に購入した人が商品に点数をつけ、コメントを書き込めるようになっている。アクセスした人は、書き込まれた他人のコメントを読めるだけではなく、そのコメントが役立ったかどうか評価することもできる。

また、専門家がオンラインショップの信頼性やサービスについて評価するサイトも人気だ。「BestSHOP」や「Gomez」などがそれ。あるいは日本通信販売協会や日本商工会議所が審査して発行しているオンラインマーク制度。購入にあたってこうしたサービスでショップを確認しておくと安心だ。

ほかにも、商品の価格を比較できるサービスや消費者の声を集めることでメーカーに希望の商品を作ってもらおうとするサービスなどもある。

 

■「コミュニティ」こそがネットの本質

これらインターネット上に登場してきた新しいサービスの多くは、「コミュニティ」がキーワードになっている。これまで、個々の小さな声でしかなかった消費者が、インターネットを介してつながることによって大きな力になる。その相互作用を活かそうというのが「コミュニティ」サービスの主眼だ。

じつは、インターネットの本質はこの「コミュニティ」性にこそある。現在インターネットをはじめる人の動機として多いのは「電子メール」だが、このことも人がインターネットにコミュニティ機能を求めていることの証左といえるかもしれない。昨年から爆発的人気を呼んだiモードも、メール機能がなければどうだったか。

インターネットは「ホームページ」を見るためだけにあるのではない。むしろコミュニケーションのツールであり、仲間を得るためのツールとなっている。ぼく自身のアドレス帳に記された友人も、インターネットを始める前より、始めたあとに出会った人の方がはるかに多い。このほど会社を共同設立した友人も、ネットで出会った仲間だ。

IT革命の進展で「オタク」が増えることをどこかの首相が憂えていたというニュースがあったが、仮にコンピュータを孤独な機械としてとらえているとすれば、なんとさみしい理解だろう。

 

■IT革命の鍵はコミュニケーションに

民間調査によると、この夏、日本におけるインターネットの世帯普及率は30%を超えたという。しかし、誰もが揃ってインターネットを利用しているわけではない。首都圏では普及率が4割を超えている一方で、地方ではようやく1割を超したという県も少なくない。あるいは年収によるパソコン保有率の差も大きい。

ぼく自身、出張で東京に出て仕事仲間と打ち合わせるときと、兵庫県の山間部にある田舎に帰省して地元の人たちと話すときでは、インターネットに対する態度に大きな差を感じざるを得ない。そうした格差を埋めるのは何か。インターネット接続回線の太さなどの問題もあるだろう、でもなにより、それはコミュニケーションへの希求ではないかと考えている。

この夏、田舎の父がパソコンを始めた。問われて最初に教えたのは、ワープロでも表計算でもない、電子メールの使い方だ。誰かとつながっていたい、人とコミュニケーションをとりたい。その気持ちこそが古代から続く人間の本質であり、人を前に進ませ、IT時代に適応する鍵となるのではないだろうか。

1週間後、父からの初めてのメールが届いた。そこに、IT革命の明日を見ている。

滑り台の上から、テレワークのことを考える

ここで紹介する原稿は、2000年の6月、『アスキー』というIT系雑誌向けに書いたコラムです。迎えた21世紀に向けた決意表明的な内容にもなっていますね。

2016年度、丹波市は総務省の「ふるさとテレワーク推進事業」に採択され、青垣にシェアオフィス空間を設置するなど、テレワークを推進し、若い世代の移住を進めようとしています。この夏までぼくが代表取締役を務めていた『株式会社ご近所』も、その種まきに関わらせていただきました。

テレワーク。実は20年前からずっと意識し続けてきたんです。それがようやく、市の規模で少しずつ進み始めました。まだまだ、これからですが。

というわけで16年前のこちらの原稿、当時のぼくの生活風景の一端と、ぼくが何を目指して、何のためにテレワークに取り組んでいるかを、そして田舎にUターンする目的も含めて、まとめています。

文中、創業した会社の名前だけは、仮名に修正しました。そちらの会社の経営からはずいぶん前に身を引いたので。(その会社は、後を託したメンバーと新しい協力者のおかげで、今では東証マザーズに上場し、時代の先端を走っています。)

生活の場、仕事の場 

午後2時。子どもを連れて近所の公園へ行く。平日のこの時間は、あんがい人が少ない。何羽かの鳩と遊具が占領している公園で、子どもがまず向かうのは滑り台だ。階段をのぼり、上でしゃがみ込んで、しかし滑らない。ほんの1カ月前までは喜んで滑っていたのに。「いくで」とかけ声は勇ましいのに身体が動かない。もうすぐ2歳、少し恐怖心が芽生えてきたか。

そんな息子を見上げながら、頭の中は翌日にせまった雑誌原稿の締切のことが巡っている。テーマは決まっているけれど、書き出しが思い浮かばない。悩みながら、滑っておいでよ、と子どもに声をかける。子どもが背負っている日射しがまぶしい。ゆったりした子どもの時間と、自分が抱えている切迫感のアンバランスが、われながらおかしい。

そんな生活を、1年あまりにわたって続けてきた。HOWKSなんて造語を作って人に伝えてきたのでもある。Home Office With KidS、子どもを育てながらの在宅ワーク、とでもいった意味だ。妻は通常の会社員としてフルタイムで働いていたので、自然、日中はぼくが子どもの世話をすることになった。

ときに珍しがられたこともあったが、特別なことをしている気持ちはなかった。主夫などと表現されるととまどいもしたものだ。家庭生活の中で育児部分を分担している、たまたまそういうことだと思っていたから。

 

人はいつから家庭生活と仕事を切り分けて考えるようになったのだろう。たとえば狩猟生活の頃、生活することはすなわち仕事することではなかったか。

いや、それはいつから、という問題ではないかもしれない。農家に育ったから、父が働く姿は身近に見てきた。家のことを手伝う、という言葉は、仕事を手伝うことを意味していた。生活の場が仕事の場、仕事の場が生活の場であったのだ。こういう生活は現在においてもある。そう、いつから、というよりは、それぞれの仕事のスタイルにおける違いだろう。

では、いまぼくたちが身をおいているインターネット業界とやらはどんなスタイルか。ベンチャー企業で働いている人たちからは、ずいぶん忙しい日々を送っていると聞く。会社に連夜の泊まり込みなんてことも珍しくないようで。そういう人たちのおかげで、現在の活況が支えられているわけだし、ユーザに便利なサービスが生まれてくるわけでもある。

でも、とも思うのだ。

それって会社と家庭が切り離されているということなのだろうか。もしそうなら、そういうワークスタイルって、なんだか高度成長期の「仕事人間」を思い出させないだろうか。けっしてそれを否定するわけじゃなく、ありがたいと思っているのだけれど、一方で、もっと違うワークスタイルもあっていい気がするのだ。せっかく21世紀につながる「新しい」ビジネスをしているんだから、ワークスタイルにおいても、21世紀的な何かを生み出せないものかと。

 

インターネットビジネスに携わる人たちがある意味で24時間働けるのは、それが趣味とも重なっているからだろうし、とすれば、生活と仕事がもっと重なっていいように思う。家族か会社か、なんて選択じゃなく、どちらも満足いくまで堪能できる、そんなしくみはないものかと考えるのだ。

ビットバレーで働くのもいいんだけど、恵まれた自然の中で家族や地域社会と暮しながら、だけど会社に勤めてもいる。そんな日々もいいと思いませんか。

 

そんなことを考えているとき、縁あって東京の知人と新しく会社を設立することになった。D株式会社という。この原稿がみなさんの目にとまる頃には、無事設立されていることだろう。本社住所は東京。

といっても、ぼく自身は、現在住んでいる京都から東京に移住する予定はない。ないどころか、1年以内には田舎へUターンするつもりである。子どもが3歳になってものごころついたとき、最初の思い出が「車危ないよ」じゃ悲しい。「花きれいね」なんて思い出がいい。そう考えているから。

そう、新会社はある種のバーチャル・カンパニーである。ぼくも知人も、基本的には在宅をベースに活動する予定だ。D社として提供するサービスも、一般の会社員が会社というルートを通さずとも有益な情報を得られ共有できる、一種のナレッジ・マネジメントサービスを行なっていきたいと考えている。そういうサービスが存在すれば、ほかの人たちにとっても、少しは会社に縛られる時間が少なくてすむのではないか。そう考えてのことでもある。

 

ライフスタイルとワークスタイル。生活を楽しむことと仕事を楽しむことを一致させること。これまでひとりでやってきた小さな実験を、会社という組織に移して実験してみたい。そんな思いの一歩でもある。

まだ、海のものとも山のものともわからない。滑り台でいえばようやく上にのぼったという段階か。いま滑り出そうとしている会社、D社。それはおそれを知らぬ1歳数カ月の幼児の蛮勇か、おそれを克服した後の、3歳児の勇気か。着地まではまだまだ遠い。

ぼくが田舎に帰ったわけ

ぼくがふるさとである丹波市にUターンしたのは、2001年暮れから2002年年明けにかけてのことでした。

過去の原稿を掘り起こすシリーズ、今回は、ちょうどそんな時期、2001年10月に発表した原稿です。ぼくとインターネットの出会い、そして田舎に帰る決意について触れています。当時における現在進行形の思いを記しています。

この原稿は、当時個人向けホームページサービスとして提供されていた「@nifty」というサービスから依頼されて書いたものです。パソコン通信という、インターネット以前のネットワークサービスの頃から利用していた富士通系のサービス。「With US, You Can.」がこのサービスの標語でした。

以下に記した、田舎を舞台にして行いたいことへの思いは、現在も変わっていません。

 ぼくが@niftyの前身であるニフティサーブに入会して、すでに10年のおつきあいになります。パソコンを買ったのが1989年、当初ワープロがわりに利用していたのですが、1991年、ニフティサーブの利用を始めておおきく変わりました。ネット上には多くのフリーソフトがあり、「フォーラム」と呼ばれるコミュニティが揃っていました。ぼくは各種のソフトをダウンロードして利用し、フォーラムに参加して知識を吸収したのです。

そして、もうひとつの転機は1998年1月。前年12月にはじまったホームページ開設サービス「メンバーズホームページ」を利用し、「Unplugged for eMarketers」を開設しました。おかげさまで同年の「ニフティサーブホームページグランプリ」をいただくなど好評を得ただけでなく、サイトをご覧になった編集者の方から執筆依頼が来るようにもなりました。まさに「With Us, You Can.」。@niftyが、ぼくをここまで育ててくれたといっていいと思います。

いま、時代は「個」を重視するようになっています。自己責任がいわれ、企業においても能力主義がうたわれています。そんな時代に、これまでぼくを支えてくれたように、@niftyが活躍できる分野はますます大きくなることでしょう。

ぼく自身は、近々田舎にUターンします。残念ながら今の世の中は、個人が「田舎に住みたい」と考えても、職の問題やネット環境など、それをあとおししてくれる状況にありません。むしろいっそう都市集中へ向い、選択肢が狭まっているようでもあります。そんな風潮が残念で、田舎から情報発信することで、ひとり一人が自由に選択肢を選べる、多様性のある世の中を作りたいと考えているのです。

多数につかないというのは厳しい選択です。でも、そんなときにこそ「いっしょに」と思うことができるやさしさを、@niftyには持ちつづけてほしいと願っています。

オンラインショップ成功術(2000年版)Vol.2

過去の原稿から拾ったオンラインショップ成功術。今から16年前のオンラインショップ・マスター向けの助言、前回「オンラインショップ成功術Vol.1」の続きを掲載します。

ECマネージャーにとってたいせつなのは「顧客情報」

ECマネージャーにとって必要な情報にはどんな種類があるだろうか。以下に大きく分類してみよう。

  1. 市場全体の情報
    EC市場の推移や関連法案など店舗運営の背景となる情報
  2. 競争環境に関する情報
    競合他社の新サービスや商品価格など
  3. 利用者に関する情報
    インターネットユーザの利用行動・意識に関する調査レポートなど
  4. 店舗構築に関する情報
    サイト構築技術や関連サービスなど
  5. 取引に関係する情報
    取引先や決済システム動向など、販売に関係する情報
  6. 自社に関する情報
    自社の商品や顧客、アクセスログなどに関する情報

この中でもっとも重要なのは「自社に関する情報」であり、次は「利用者に関する情報」といえる。ECサイトを成功させるためには、まずサイトへの訪問客を掘り起こし、それを購入につなげ、再訪問いただき、購買を広げ、友人に紹介してもらい、といったサイクルを作っていかなくてはならない。このサイクルの中でもっともたいせつなのは、自社サイトで購入していただいてからのステップだ。

ECサイトの成功は、単なるアクセスアップではなく、自社の顧客の満足感をどれだけ高められるかということにある。自分のショップの売上が芳しくないと悩んでいる方がいらっしゃったら、まずは自社の顧客についてもっとよく調べてほしい。わざわざアンケートをとる必要はない。一件のクレームでもいいし、知人が自分のショップで買い物をしてくれるのを肩越しに眺めているだけでもいい、そういう生の情報を手に入れること。役立つ情報は、マクロな数字ではなく、リアルで具体的な細部にこそ宿る。

ひとつひとつの情報を「で」の思考でつないでいく

ECに関する情報は世の中に氾濫している。その中から自分にとって必要な情報を選んでいかないと、情報におぼれてしまいかねない。では、必要な情報、重要な情報とは何か。それを判断するには、科学的とは少々言いかねる手法だが、情報に接したとき、「で」と問いかけてみることだ。

たとえば現在、シニアユーザは全体の5%に満たない。「だから」撤退する、ではなく、「で」どう対処する、とつなげるのだ。「で」5%といえば約100万人、などと続けてみる。そして、自社がどのような手を打てばいいか、まで言葉を続ける。「で」のあとの言葉が、自社がとるべき行動を述べる文章まで続かなければ、その情報に価値はない。

この選別法を、ぼくは「石積み選別」と呼んでいる。ある情報に接したら、その情報をもとに自分がどのような行動を取れるかを、「で」によって積み上げていく。文章を重ね、石垣を積むように。うまく積み上がらなければ、その石は捨てる。「だから」でつなぐと、思考は情報を前提にぶら下げる干し柿のようなスタイルになってしまうけれど、「で」は思考を積み上げてくれる。

情報とはつまり、自社が何をするか、何をしなければならないかを考えるための積み石なのだ。「で」の姿勢で受け、石垣のように積み上げていく、それがショップの成功につながっていく。

この後、現行はオンラインショップ・マスターのための情報整理術に移っていくが、さすがにここは、各種のストレージサービスが登場した今では古びている(使えなくはない)ので、割愛する。

上記で述べた「で」でつなぐ思考術。ぼくは今でも意識している。

オンラインショップ成功術(2000年版)Vol.1

その昔、文筆業を主にしていた頃の原稿から、ちょっと拾ってみます。

それというのも、時代は大きく違うのですが、ぼく自身の考え方の根本はそう変わっておらず、それをお伝えする手助けになるかな、と思ってのこと。

以下は、2000年の原稿。今から16年前、日本の消費者向けEC市場は3,500億円(今では『楽天』だけでもこの何倍も売ってますね)と通信白書で言われていた頃の話です。

「EC情報術」と題して、オンラインショップの運営者向けに書いた原稿です。

企業の将来さえ左右するECマネージャーの情報判断

「利用層が少ないから、売上は期待していません」

ECサイトのコンサルティングに携わっていると、ときにそんな言葉に出会う。5年ばかり前なら女性向け商品を扱うショップのオーナーから、いまならシニア向けショップの運営者から。業務を受ける側の精神的負担を軽くしようという配慮かと感謝しつつ、ちょっとした違和感を感じてもいた。

その違和感をひとことにするなら、「ほんとうに市場がないのか」ということだ。1995年当時のオンラインユーザ調査によれば、女性比率は5%弱、女性の利用層が少なかったことは確かだ。とはいえ、女性比率が4割に達した今なら市場があるかというと、競争が激しくなったことで市場参入はむしろ難しくなっている。つまり、ある店舗にとっての市場ということに関していえば、女性比率4割の現在より、女性比率1割未満の時代のほうがあったといえるのではないだろうか。

同じことが現在のシニアユーザにも言えるだろう。確かに利用率は他世代よりも低い。しかし、その情報を正しく読み取らないと、ECマネージャーとして大きな戦略判断ミスをおかしてしまう可能性がある。
では、ECマネージャーにとって、情報の正しい読み取り方とはなんだろう。

数字を頭で受け取るのではなく肌感覚で納得できるところまで砕く

あるカレンダー販売サイトの話をしよう。このショップでは、昨年よりカレンダーに企業名を入れて100部単位で納品する「ネームプリントサービス」を開始した。いわば企業対企業の取引だ。

BtoB(企業間取引)市場は、平成12年度版通信白書によれば昨年度約14兆円が2005年には103兆円になろうという成長市場。だが、ECマネージャーであるあなたにとって、兆単位の数字はほとんど意味を持たないのではないだろうか。前述カレンダーショップの店長はBtoB市場の成長を確信していると言うが、それは通信白書にあるからではなく、今年の受注開始以来1カ月間の受注額がすでに昨年全体の4倍弱となったからにほかならない。そう、ECマネージャーにとって意味のある数字とは、こうした肌で感じることのできる数字なのだ。

先の女性比率の例をひけば、ECマネージャーとしてみるべきは全体比5%という数字ではなく、最初の1カ月に自分のサイトに来てくれる一人、その一人がいらっしゃるかどうかということだ。当時のインターネット人口が数百万人として、その5%といえば少なくとも10万人は超える。ではその10万人の女性ユーザに自店の存在を知らせる方法があるかどうか。一人でもいいから、自分のショップに来ていただくことができるかどうか。こうした問題こそを情報から読み取ろう。5%という数字は単なる統計に過ぎないが、最初にあなたのサイトに来てくれる一人は顔のある一人だ。その一人に満足いただければ次の一人につながり、そうしてあなたにとっての市場は膨らんでいく。

オンラインショップの成功事例として有名なあるTシャツショップのオーナーも、トップページに並べた「プライバシーポリシー」「連絡先」「お客様の声」「各種決済方法」などの項目は、ユーザアンケート結果に発表されていたことを参考にして、お客様がオンラインショッピングに対して不安に思っている上位項目を掲げたものだという。情報を単なる数字として終わらせていない好例といえる。

あなた自身の肌で実感できるものとして情報をとらえること。ECマネージャーは、情報に接するとき、つねに肌感覚を忘れないでほしい。

頭ではなく、肌感覚を重視するっていうのは、その後もずっと意識しています。この部分、近年では「フェルミ推計」なんて呼び方をして、注目されたりもしましたね。