一般質問の組み立て方~マーケティングとイノベーション解題

再質問の話に入る前に、一般質問についてもう少し。

ときに「議員は市政のチェックが仕事だからやりたいことを実現できないのでは」という質問をいただくのですが、ぼくはそう思いません。
一般質問を通して、やりたいこと(公約)を実現することができると考えています。

ぼくはかねて市民が主役のまちを実現するため、「市民と行政の協働を促進」「共感を広げる仕組みを構築」「多様性を大切にする社会の実現」の3つの柱(及びそれぞれに3つずつ計9つの具体策)を訴えてきました(「市民が主役のまちへ」参照)。
一般質問は、それを軸に組み立てる計画を立てました。

質問の骨子を作り始めたのは、市長の所信表明を聞いた後です。所信表明の文脈をふまえて質問を組み立てる方が議論がかみ合うと考えたからです。
幸い、谷口進一新市長は企業視点の重要性を意識されており、「マーケティング」という言葉を所信表明で用いられていました。
その背中を押しつつ、自分なりにこの15年間市民の方々とともに積み上げて得た知見を活かしてもらうことが、目指すまちの姿を実現する近道と考えました。

3つの柱のうち「多様性を大切にする社会の実現」は具体像になるので3月定例会に回すとして、そしてまた、初回ですから具体的方策よりも、方策を実現する土台となる、組織作りと当事者づくりに焦点をあてることにしました。

取り上げたのは、「共感を広げる仕組みを構築」するためのマーケティング、「市民と行政の協働を促進」するためのイノベーションのふたつです。

さて、日本で人気が高い経営学者ピーター・ドラッカーに『マネジメント』という書籍があります。『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーのマネジメントを読んだら』という映画化もされたベストセラーがありましたので、そちらを通してご存知の方が多いかもしれません。

この書籍でドラッカーは、企業の目的は利潤ではないとした上で、「企業の目的は、顧客の創造である」と述べています。
これは日本マーケティング協会による「マーケティング定義」にもあるのですが、「顧客」は、単にモノを買う人だけではなく、地域住民まで含めた幅広い意味を持ちます。

ところで丹波市は、総合戦略において2060年における総人口5万人程度を目指すとしています。何もしないと3万5000人になるという予測から、相当の上積みを狙うわけです。
これを達成するためには、この先、丹波市に関心を持つ人を増やし、その関心を愛着へと育み、このまちに暮らしたいと考える「顧客」を創造することが欠かせません。

ドラッカーは、先の「企業の目的は、顧客の創造である。」に続けて、こう言っています。「したがって、企業は二つの、そして二つだけの基本的な機能を持つ。それがマーケティングイノベーションである。」と。
カタカナ用語が出てきましたが、ビジネス用語としては一般化されている言葉なので、日本語にしようがありません。ここは図解フリップで用語解説を補足しました。図は「議会は一般質問がおもしろい! かもしれない(^^」で紹介していますので参照ください。

要点を述べるなら、マーケティングは顧客との相互コミュニケーションを通して顧客満足を獲得し、市場を広げていくことです。
イノベーションは、現在はまだ顧客自身にも見えていない新しい価値、新しい満足を生み出すことを言います。

丹波市ファンを増やすためにマーケティングが欠かせないのは自明でしょう。
また、このままだと急減する人口を一定程度に保つという、いわば不連続な未来を作ろうというのですから、これまでの政策にないイノベーションも重要になってきます。

今回の質問で「マーケティング」と「イノベーション」を取り上げた理由、それは、丹波市にこの両輪を着実に働かせ、「顧客の創造(=定住人口の創造)」を図りたいと考えたからにほかなりません。

当日は上記のような話を前段に述べた後、いよいよ「市政へのマーケティング視点導入について」と「協働と参画によるイノベーションの創出について」のふたつの柱についての質問に入りました。

前段については当日のアドリブも入れましたが、後段の質問文については、答弁ともからみますので、できるだけ事前の通告文に忠実に質問しました。
特に確認したかったのは次の4点です。

  • マーケティングの位置づけ
    市長の所信表明からは、マーケティングという言葉が、市民の満足度を高めることに矮小化されている可能性を感じました。それはもちろん大切ですが、加えて、市外からのファンを増やす攻めの部分でマーケティングを活用すべきではないかと問いました。
  • マーケティング専門部署の設置
    丹波市をマーケティングしていくには専門部署が必要です。ただし、イベントの実行を目的とするような近視眼でない目的をもった組織として。
  • 職員のイノベーション精神
    失敗を恐れず、新しいことに取り組む職員さんを増やしてほしいと願っています。丹波市からもスーパー公務員が生まれてほしい。その後押しをできないかと質問しました。
  • 市民との協働の促進
    課題の最先端は現場にあります。なので職員さんには、現場に出て市民とともにイノベーションを生み出してほしい。それを促す仕掛けを問いました。

ドラッカーの著書『マネジメント』と、関連書『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーのマネジメントを読んだら』。当日はこうした書籍も議場に持ち込んで紹介しつつ質問にあたりました。

「一般質問の組み立て方~マーケティングとイノベーション解題」への3件のフィードバック

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