副題にあるように、テレビ放送が始まってからの25年間に放送された番組をたどった記録。同時代を生きた著者が、現場の様子を丹念に伝えている。
ひとつひとつの番組の裏舞台で行われていた苦労や、有名番組の思わぬ誕生秘話、配役の移り変わりなど、関係者へのインタビューも交え、生き生きとした様子が甦る。
貴重な記録だ。
志賀さんは、この25年間を5つの時期に分けている。それぞれで紹介されている番組名からの抜粋も含めて、紹介しておく。
揺籃期。『ジェスチャー』(NHK)、『紅白歌合戦』(NHK)、『私は貝になりたい』(TBS)、『事件記者』(NHK?民放)、『月光仮面』(TBS)、他。
創生期。『光子の窓』(日本テレビ)、『兼高かおる 世界の旅』(TBS)、『白馬童子』(テレビ朝日)、『七人の刑事』(TBS)、『てなもんや三度笠』(朝日放送)、他。
成長期。『ニュースコープ』(TBS)、『鉄腕アトム』(フジテレビ)、『ひょっこりひょうたん島』(NHK)、『小川宏ショー』(フジテレビ)、『題名のない音楽会』(テレビ朝日)、『おばけのQ太郎』(TBS)、『11PM』(日本テレビ)、『サザエさん』(TBS・フジテレビ)、他。
発展期。『ウルトラシリーズ』(TBS)、『氷点』(テレビ朝日)、『すばらしい世界旅行』(日本テレビ)、『銭形平次』(フジテレビ)、『意地悪ばあさん』(日本テレビ・フジテレビ)、『3時のあなた』(フジテレビ)、『夜のヒットスタジオ』(フジテレビ)、『水戸黄門』(TBS)、他。
成熟期。『8時だョ!全員集合』(TBS)、『巨泉・前武ゲバゲバ90分!』(日本テレビ)、『スター誕生!』(日本テレビ)、『新婚さんいらっしゃい!』(テレビ朝日放送/朝日放送制作)、他。
それぞれの番組には、制作者たちの熱い思いがあり、技術的な制約があり、テレビという媒体にたいする野心的な挑戦があり、予算面の苦心があり……。
あなたにとって懐かしい番組、うわさは聞きつつも見たことはなかった番組、これまで知らなかった番組、いろいろあると思う。それら番組の成立事情や業界に与えたインパクトなどが描かれ、楽しめる。
もともとは雑誌連載されていた原稿なので、ひとつひとつの番組についてのエピソードを独立して読むこともできる。
気になる番組から拾っていき、ゆっくりと読み進めてもいい。個々の番組の制作現場から、テレビという新しいメディアが立ち上がった時期の香りをかぎとることができる。
時代の流れを俯瞰的に分析したものとしてより、具体的に番組がどのように作られたかを描く資料として価値のある内容といえる。
クリエイターにとっては、行間から新しい時代をつくる気概を感じ、力を汲み取ることもできることだろう。