今回の定例会には、公の施設の廃止に関する条例も提案されています。
■議案94号 丹波市立交流施設条例を廃止する条例
このような議案の場合、、まずは2022年(令和4年)4月に策定された「丹波市公共施設個別施設計画」に添っているかを確認します。
この計画は、「丹波市公共施設等総合管理計画」を基盤とし、それをもとにした「丹波市公共施設保全計画」に基づいて策定されたものです。
今回議案にあがっている「野上野交流施設」を確認すると、次のように記されており、計画通りの進捗ということが分かります。
平成25年2月18日付けで締結した「木の香るまちづくり事業 野上野交流施設建築工事」に伴う地元負担金及び施設管理に関する覚書」に基づき、令和5年4月1日に現状有姿で指定管理者である「野上野自治会」に無償譲渡する。
丹波市公共施設個別施設計画
さて。
せっかくなので、丹波市の公共施設マネジメントについて、ざっと確認しておきましょう。
専門用語で「ファシリティ・マネジメント」と言い、人口が縮小していく時代にあって、ともすれば過剰になる公共施設をどのように管理するか、今後欠かせない計画です。
個別計画に取り上げられている施設
まずは今年4月に策定されたばかりの「丹波市公共施設個別施設計画」をおさらいします。
およそ200の公共施設について、個別に今後の計画が記されている計画です。延べ床面積100平方メートルを超える施設が対象です。
自分が気になっているあの施設、どうなるのだろうと知りたい時は、この計画書で探すと良いですね。
計画期間は2055年度までの36年間、これを4つに分け、今回の第1期計画は2020年度から2028年度までの9年間。
ただし面積が大きくても、教育委員会が所管する「学校教育施設」と都市住宅課が所管する「公営住宅」については対象外。
これらについては、別途個別の計画が策定されているので、そちらを利用します。「丹波市学校施設等長寿命化計画」と「丹波市公営住宅等長寿命化計画」ですね。
丹波市公共施設個別施設計画で取り上げられている施設種類を列記しておきます。これだけの公共施設があるんだ、という実感を得られるかなと思って。カッコ内は施設数です。
- 行政系施設
(1)庁舎(7)
(2)消防施設(10)
(3)その他防災施設(4) - 市民文化系施設
(1)文化ホール(2)
(2)住民センター(7)
(3)交流施設等(12) - 社会教育系施設
(1)資料館(6)
(2)図書館(6)
(3)美術館(1)
(4)文化財(5)
(5)その他生涯学習施設(3) - スポーツ系施設
(1)体育館(7)
(2)その他スポーツ施設(6) - 保健福祉施設
(1)高齢福祉施設(3)
(2)障がい福祉施設(2)
(3)隣保館等(3)
(4)福祉センター(3)
(5)保健センター(1) - 医療施設
(1)診療所等(5) - 子育て支援施設
(1)アフタースクール・児童館(20)
(2)子育て学習センター(2) - 学校教育施設
(1)専門学校(1) - 観光施設
(1)観光施設(10) - 産業系施設
(1)企業研修センター(2)
(2)産業施設(11) - 供給処理施設
(1)クリーンセンター(1)
(2)リサイクルセンター(1) - その他
(1)駐輪場(7)
(2)医師住宅(1)
(3)卸売市場(1)
(4)斎場(2)
(5)モデル住宅(1)
(6)公園・公衆トイレ(4)
(7)その他(146)
その他が多いですが、廃園・廃校跡のように使われなくなった施設、人権啓発センターが管理する共同作業所などが含まれます。
丹波市の公共施設の現状は?
さて。先ほど紹介したようにこの個別施設計画は「丹波市公共施設等総合管理計画」を基盤とし、それをもとにした「丹波市公共施設保全計画」に基づいて策定されたものです。
では、最上位の「丹波市公共施設等総合管理計画」はどのような内容でしょうか。
この計画は、2017年(平成29年)に策定されています(「丹波市公共施設等総合管理計画を策定しました」参照)。
総合管理計画は、丹波市の公共施設についての大きな方針が示されています。
そこでは、まず、仮に現状ままの施設を30年ごとに大規模改修、60年で建替えすればどのようになるか予測しています。
- 保有する公共施設は408施設、約389平方メートル
- 市民一人あたり延べ床面積は約5.85平方メートル(関西類似団体平均4.99平方メートル)
- 築30年以上を経過した公共施設は約35%
- 今後40年間の更新費用は大規模改修725.2億円、建替え812.6億円で合計1,537.8億円、年平均38.4億円
これに対して、今後の目標を次のようにしています。
- 投資可能額は年間19.9億円
- 長寿命化しても年あたり更新費用は約30億円かかる
- 公共施設の延べ床面積を40年間で約34%以上縮減必要
長寿命化というのは、計画的に改修を加える手法で、35年ごとに大規模改修、70年で建替えまで延ばす前提です。
それでも年間約30億円更新費用がかかるということで、約20億円という投資可能額まで抑えるには、延べ床面積で34%減らさなくてはならないということです。
ちなみに、別の計画に記されている学校施設関係では、今後40年間で740億円のコストを見込んでおり、年間にすると18.5億円を想定しています。これを、645億円程度まで圧縮する計画です。
公共施設等再配置基本方針で取組方針を大分類
総合管理計画を受けて、2019年(令和元年)に「丹波市公共施設等再配置基本方針」と「丹波市公共施設保全計画」が策定されました。
このうち、「丹波市公共施設保全計画」が、よく耳にする「長寿命化計画」を記したものです。
長寿命化というのは、建物を利用できる期間を長くするもの。
現在は改修は傷んできたところを直す事後保全で、約15年おきに修繕を繰り返し、60年で建替えというのが一般的サイクルのイメージでした。
これを25年で予防保全としての大規模改修、50年で長寿命化改修、そして70年で建替えるイメージです。
保全計画に分かりやすい図があったので、引用します。
先ほど、総合管理計画では、従来方式では年間38.4億円の更新費用が、長寿命化工事を加えることで約30億円になると紹介しました。
しかし、この保全計画で計画されている予防保全の大規模改修を加えることで、年間6.8億円の縮減効果があると見込まれています。
今後は、こうした「予防保全+長寿命化」が公共施設管理の基本になります。
公共施設の評価方法
長寿命化計画(丹波市公共施設保全計画)と同時に作られたのが「公共施設等再配置基本方針」ですが、この計画は現在では廃止されています。
というのは、この計画を引き継ぐ形で、先に紹介した「丹波市公共施設個別施設計画」が作られたからです。
ただ、引き継ぐとはいえ、「公共施設等再配置基本方針」にありつつ、個別施設計画には書き込まれていない、注目しておきたい記述がありましたので、こちらにアーカイブしておきます。
それは、丹波市内の公共施設を次の2軸で評価し、それぞれの評価点によって、4分類した結果です。
- 施設評価軸
利用状況(1平方メートルあたりの利用者数)
維持管理コスト(1平方メートルあたり)
安全性と耐震性(経過年数) - 公共性評価軸
法律で設置が義務付けられているか
設置当初の意義が持続しているか
不特定を対象としつつ実際の利用が特定に偏っていないか
民間委託によりより良い管理ができないか
他に類似施設が存在しないか
小学校区単位で偏りが無いか
その結果は、以下の表です。
その上で、今後の取り組みスケジュールについて、たとえば柏原支所なら令和4年度までに「機能は柏原住民センターに移転」、本庁や春日庁舎なら「令和6年度中までに総合庁舎の整備について検討」などと取り組みスケジュールが記されていました。
今回の議案は特別多数議決です
ここで補足的に、もう一度冒頭の議案に戻りますが。
議案94号は「丹波市議会の議決を経なければならない重要な公の施設の利用等に関する条例」に基づく特別多数議決です。つまり、出席議員の3分の2の賛成を要します。
この仕組みについて、詳しくは以下の二つのエントリーもご参照ください。
- 市の財産の分類とその設置及び廃止
市の財産はどのように分類され、それを設置あるいは廃止するときの手続きはどうするかについてまとめています。 - 特別多数議決とは何か?
特別多数議決はどのようなケースで求められているか、まとめています。