決算審査はどう行うか(健全性編)

 「決算審査の勘所」で決算審査の概要をお知らせしました。
 それでは丹波市の決算は具体的にどうなっているか。今回から3回に分けてお伝えします。

 その前に。
 議会では決算審査にあたって、提出された書類をもとに審査する決まりです。証拠書類等を検閲することはできません。
 資料請求すればある程度出てきますが、強制力はありません。

 今回の決算では、監査委員からの審査意見で、次のようなかなり厳しい指摘がありました。

団体等への補助金の交付事務において、交付申請書や実績報告書等の確認や審査が不十分なものが見受けられた。とりわけ、空き家利活用地域活性化事業補助金の交付事務については、特に、交付決定にかかる要件審査が的確・厳格とはいいがたい不十分なものであると思われた。また、事業主体への指導にも不十分な点があると思われ、事務処理に適性を欠くと言わざるを得ない。(以下略)

丹波市一般会計及び特別会計歳入歳出決算並びに基金運用状況審査意見書

 決算書に付される意見書に通常なら「収支とも適法にして正確であることを認める。」と記されるところ、「収支とも適法にして」の文言が省かれているほどです。
 議会としてはこれを看過することなく確認せねばなりません。補助金交付事務における関連書類を検閲する必要もあるでしょう。

 そこで本会議において、地方自治法98条に基づく関係書類検閲の権限を予算決算常任委員会に委任しました(ちなみにさらに参考人聴取まで行いたい場合は同100条の権限を与えます)。

普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務に関する書類及び計算書を検閲し、当該普通地方公共団体の長、教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会若しくは公平委員会、公安委員会、労働委員会、農業委員会又は監査委員その他法律に基づく委員会又は委員の報告を請求して、当該事務の管理、議決の執行及び出納を検査することができる。

地方自治法第98条

 それでは。
 まずは全体としての会計の状況を確かめておきます。

丹波市の財産の状況

 公有財産の状況や基金の運用状況などについては「財産に関する調書」に記されています。「決算附属説明書」も参考にします。

 土地や建物、債券などの公有財産については、少し増加。2割くらいは減らしていかないといけないという公共施設マネジメントの計画ですから、監視を続けます。

 基金は一般会計で18種類あります。合計で残高は141億7,113万円。2.4%減となっています。特別会計で5種類、合計11億6,212万円。こちらは前年度から4億2,201万円の増。国民健康保険財政調整基金で大きく増えています。

 基金のうち、財源の年度間での安定をはかる財政調整基金は1億9,619万円減で49億1,879万円。地域振興基金は2億2,019万円増の44億6,091万円。ただし5月に2億1,586万円取り崩しているので、決算的にはほぼ変わらずですね。庁舎整備事業基金は4億354万円増の16億2899万円。市債の償還等にあてる減債基金は3億4,039万円減の9億2,555万円。などなどとなっています。

 基金は家庭でいえば貯金にあたるものなので増えると安心という面はありますが、目的も無く積み立てるようだと、それなら年度内の事業に支出して住民サービスの向上に充てるべきという議論もあり得ます。

財政運営の適否

 財政運営は適切かどうか。
 「収支が計画的に運営されているか(計画性)」「自由に使える財源が充分か(弾力性)」「住民福祉の公共のために積極的に利用しているか(積極性)」という3つの観点から確認していきます。

・計画性
 収支の均衡がとれたものかどうか。赤字は問題外ですが、極端な黒字も予算執行上は疑問符がつきますね。
 判断基準としては、実質収支です。歳入から歳出及び翌年度繰越財源を引いたもの。13億9,575万円の黒字です。予算比約3.5%。3~5%が望ましいとのことですので、ちょうどよい水準です。
 ただし、実質収支は翌年度に引き継ぐものですから、単年度での実質収支を見るには、当該年度分から前年度分の実質収支を差し引きます。すると単年度では3億円の黒字。黒字は3年ぶりです。

・弾力性
 人件費などどうしても必要な義務的経費を支出した上でなお財源に余裕があるかどうか。この余裕を無くすと、独自色のある政策が実行できません。
 判断基準は二つ。まず経常収支比率ですが、87.0%で前年度より0.9ポイント改善です。一般には75%以上が望ましいので、良い水準です。
 もう一つが公債費比率。これは単年度ではなく3か年平均をとります。6.7%と前年度より0.4ポイントの悪化。とはいえ12%以下くらいが望ましいことを考えるとまだ健全です(早期健全化基準は25.0%)。

・積極性
 積極的に財政運営をしているかどうか。公共施設や投資的経費について、住民一人当たりどのくらいかが指標になります。
 丹波市の場合、そもそもの財政規模が同規模の自治体よりも大きいです。これはやはりこども園や新病院などの整備を進めてきたためで、その点では積極的と言えるでしょう。

地方公共団体の財政の健全化に関する法律に添った判断

 国の法律に添った判断基準です。
 丹波市は赤字や資金不足という事態には陥っていないので、まず健全です。実質交際費率については先に触れた通り。
 また、将来負担比率は13.8%で昨年度より3.0ポイント好転しています。早期健全化基準は350%です(ちなみによく話題に出されるおとなりの丹波篠山市は平成29年度で187.2%。平成20年には308.5%ありました)。

 ということで、今回は全体としての健全性を確認しました。続きは「歳入編」「歳出編」で。

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