オンラインショップ成功術(2000年版)Vol.2

過去の原稿から拾ったオンラインショップ成功術。今から16年前のオンラインショップ・マスター向けの助言、前回「オンラインショップ成功術Vol.1」の続きを掲載します。

(2019年追記)


ECマネージャのための情報収集・整理術


翔泳社DB Magazine2000年11月号別冊『EC Magazine』

ECマネージャーにとってたいせつなのは「顧客情報」

 ECマネージャーにとって必要な情報にはどんな種類があるだろうか。以下に大きく分類してみよう。

1.市場全体の情報
 EC市場の推移や関連法案など店舗運営の背景となる情報
2.競争環境に関する情報
 競合他社の新サービスや商品価格など
3.利用者に関する情報
 インターネットユーザの利用行動・意識に関する調査レポートなど
4.店舗構築に関する情報
 サイト構築技術や関連サービスなど
5.取引に関係する情報
 取引先や決済システム動向など、販売に関係する情報
6.自社に関する情報
 自社の商品や顧客、アクセスログなどに関する情報

 この中でもっとも重要なのは「自社に関する情報」であり、次は「利用者に関する情報」といえる。ECサイトを成功させるためには、まずサイトへの訪問客を掘り起こし、それを購入につなげ、再訪問いただき、購買を広げ、友人に紹介してもらい、といったサイクルを作っていかなくてはならない。このサイクルの中でもっともたいせつなのは、自社サイトで購入していただいてからのステップだ。

 ECサイトの成功は、単なるアクセスアップではなく、自社の顧客の満足感をどれだけ高められるかということにある。自分のショップの売上が芳しくないと悩んでいる方がいらっしゃったら、まずは自社の顧客についてもっとよく調べてほしい。わざわざアンケートをとる必要はない。一件のクレームでもいいし、知人が自分のショップで買い物をしてくれるのを肩越しに眺めているだけでもいい、そういう生の情報を手に入れること。役立つ情報は、マクロな数字ではなく、リアルで具体的な細部にこそ宿る。

ひとつひとつの情報を「で」の思考でつないでいく

 ECに関する情報は世の中に氾濫している。その中から自分にとって必要な情報を選んでいかないと、情報におぼれてしまいかねない。では、必要な情報、重要な情報とは何か。それを判断するには、科学的とは少々言いかねる手法だが、情報に接したとき、「で」と問いかけてみることだ。

 たとえば現在、シニアユーザは全体の5%に満たない。「だから」撤退する、ではなく、「で」どう対処する、とつなげるのだ。「で」5%といえば約100万人、などと続けてみる。そして、自社がどのような手を打てばいいか、まで言葉を続ける。「で」のあとの言葉が、自社がとるべき行動を述べる文章まで続かなければ、その情報に価値はない。

 この選別法を、ぼくは「石積み選別」と呼んでいる。ある情報に接したら、その情報をもとに自分がどのような行動を取れるかを、「で」によって積み上げていく。文章を重ね、石垣を積むように。うまく積み上がらなければ、その石は捨てる。「だから」でつなぐと、思考は情報を前提にぶら下げる干し柿のようなスタイルになってしまうけれど、「で」は思考を積み上げてくれる。

 情報とはつまり、自社が何をするか、何をしなければならないかを考えるための積み石なのだ。「で」の姿勢で受け、石垣のように積み上げていく、それがショップの成功につながっていく。

日々手に入る膨大な情報は自分宛のメールで整理する

 では、集まった情報をどう整理すればいいのだろうか。日々たまっていく「で」でつなぐことができた情報群。なかにはプリントアウトする方もいらっしゃるようだが、それでは後ほどアクセスされる可能性は少ない。ブックマーク(お気に入り)に入れていくのも方法だが、残念ながらこの方法では情報そのものはブックマークできても、「で」以下の部分がメモできない。そして何よりブックマークが膨大になりすぎる。

 ぼくが実践しているのが、日々集めた情報を自分宛にメールすることだ(そのメールを皆さんに公開しはじめたのが、「今日の雑学+(プラス)」というメールマガジンだ)。メールには、まず情報のタイトルや要約などを記入する。次に情報の入手先のアドレスを記入。そして「で」でつなぐような、自分がその情報を気に入った理由を簡単にメモしておく。全体でほんの数行でいい。これだけのことをメールソフト上で記入し、それを自分宛にその日の終わりにメールする。
 こうすると、あとでその情報が気になったとき、メールソフトの検索機能で検索できるし、メールしておくことで、情報に日付のタイムスタンプがつく。いつ頃出会った情報かがひと目でわかるのだ。

 さあ、ここまでできれば、あなたの情報への態度は少しなりとも変わっているはずだ。冒頭のひと言に戻ろう。
「利用層が少ない」
 で、あなたならどうする?

■付録:情報収集3原則
1.統計情報は肌で実感できるところまで砕く
2.リアルで具体的な、細部に関する情報を求める
3.「で」によって思考を積み上げられる情報に絞る

■付録:情報整理3原則
1.テキスト化して検索しやすいようにする
2.クリッピングした理由も一緒に保存する
3.情報に出会った日付を明確にする

■付録:ECマネージャーのための情報源ベスト5
・電子商取引推進協議会
http://www.ecom.or.jp/
ユーザ調査結果からノウハウまで豊富な情報がまとまっている。
・eRetail.net
http://www.eretail.net/
英語だが、多くの情報からEC関連のものをピックアップして毎日紹介。
・オンラインショップマスターズクラブ
http://www.osmc.ne.jp/
ショップマスターの情報交換の場。自分でショップを始めたらぜひ参加したい。
・IT Pro
http://itpro.nikkeibp.co.jp/
電子商取引のコーナーでは最新のニュースを読むことができる。
・今日の雑学+(プラス)
http://unplugged.ne.jp/
お恥ずかしながら、有名ショップオーナーの皆様もご愛読いただいているそうです。

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