いよいよ接種予約が始まるコロナワクチン-副反応、2回接種、変異株-

 予防接種に関してよくある疑問に関し、以下は自分なりに調べた結果です。
 情報活用は自己責任としていただき、より詳しくは専門家の意見をたいせつにしてください。たとえば「こびナビ」といったサイトもあります。

副反応は大丈夫?

 ワクチンを打ちたいけど副反応が心配という声を聞きます。

 そもそもですが、ワクチンって、いわば疑似的に病気に感染した状態を作るものです。だからワクチンに対して身体が「反応」するのは当然のこと。

 ワクチンは「副反応」と言いますが、薬は「副作用」と言いますね。

 花粉症の症状を抑える薬なら、鼻や目にある細胞にかゆみをひきおこす「ヒスタミン」がくっつかないように、とっかかりをふさいで邪魔をします。これが本来の作用。
 ところが同じとっかかりを持つ細胞は脳にもある。そうすると薬が脳の細胞にも作用し、眠気を催す。これが「副作用」。(日経メディカル「抗ヒスタミン薬(内服薬・注射剤・貼付剤)の解説」等参照)

 一方のワクチンは、「ウイルスもどき」を体内に送り込むもの。直接的な作用ではなく、身体の側が「ウイルスもどき」に反応して、「この特徴のあるウイルスは悪者だからやっつけなくては」と防御体制(免疫)を準備することを目指します。
 このとき発熱したりするのは、風邪をひいたら熱が出るように、外部からの侵入者に対する自然な反応の一種です。

 ただ一部の方は、この侵入者に対する反応が大きすぎて、身体がショック状態(アナフィラキシー)になったりする危険性がある。これは気を付けなくてはなりません。

 厚生労働省では定期的に副反応についての情報を収集しており、「厚生科学審議会 (予防接種・ワクチン分科会 副反応検討部会)」で公開されています。
 4月18日時点の情報では、約198万回の接種数の中で、ワクチンに関連した副反応疑いの報告は2,401件(0.12%)で、アナフィラキシーは492件です。ワクチンに起因して死亡された例は報告されていません(因果関係不明の死亡者は10名あります)。

 ただ、これは予防接種法に基づいて報告された件数。日常的な「反応」はもっと高確率で起こります。約2万人を対象に追跡調査をされた結果を見てみましょう(「新型コロナワクチンの接種後の健康状況調査」)。

 接種部位の痛みは、1回目2回目の接種ともほぼ9割の人が感じており、3日目くらいまでを中心に、痛みはまず出てくると考えてください。

 また接種後、身体がだるいなぁと感じることもよくあるようです。1回目のあとで10人に2人くらい、2回目接種後は7割近くの人がだるさを感じています。場合によっては1週間ほど続くこともあるようです。

 発熱については、1回目接種後は5%弱と少ないですが、2回目接種後は35%強の人が37.5度以上の発熱。2日目が中心のようですが、人によっては3日、4日と続く場合もあるようです。
 特徴的なのは、発熱は若い人ほど顕著なこと。20歳代の場合はほぼ半数の方が発熱しています(70歳代は1割程度)。

 そういうわけなので、ワクチン接種の翌日は、熱が出たり身体がだるかったりすると想定して、あらかじめ休暇をとっておくなどして身体の養生にあてた方が良さそうです。

なぜ2度も打つのか?

 ウイルスって、身体に入った後は、細胞にとりついて悪さをします。

 なのでウイルスに対抗するには3つの手段があります。

 1つ目は体内に入ってきたウイルスそのものを捕食する方法。マクロファージというのがその役目を果たしていますが、これは自然免疫としてどのような場合でも対応します。

 一方で、より賢い戦略的な防御方法があります。

 そのひとつはウイルスが細胞に入り込む手口を妨げる方法。ピッキングで家(細胞)に侵入しようとする泥棒(ウイルス)がいたとしたら、泥棒の手にグローブをはめてピッキングできなくするような感じ。
 もう一つは、ウイルスがとりついてしまった細胞そのものを破壊する方法。泥棒が入った家を泥棒ごと壊して退治する。

 ワクチンが目的とするのは、これら賢い方法を身体に覚えさせることです。もともと備わった免疫ではないので、獲得免疫と呼んでいます。

 というのは、これらの賢い方法の場合は、ウイルスごとにカスタマイズして準備しなくてはなりません。こういう特徴を持っているから覚えておいてね、と。覚えておくことで、次からは即座にウイルスへの対抗戦略を発動できる。
 教師役が樹状細胞、記憶して全身を巡回するのはリンパ球(T細胞)の役割。ワクチンは樹状細胞に教育用のウイルス模型を渡しているわけです。

 ちなみに記憶役のT細胞にはキラーとヘルパーっていうのがあって、キラーT細胞の方が家(感染した細胞)ごと破壊する役割で、ヘルパーT細胞は他のリンパ球(B細胞)を活性化して抗体を生産させる役割を担っています。
 抗体っていうのは、ウイルスが細胞とくっつくのを邪魔する役割をするタンパク質(免疫グロブリン)ですね。泥棒の手にグローブをはめていく役割。

 ウイルスを泥棒に例え、その特徴を覚えさせると表現しました。
 泥棒の特徴と言っても、さまざまですよね。歩き方だったり、顔だったり、手の動きだったり。一度にすべては覚えられない。

 免疫の場合も同じ。1度目のワクチンで覚えた特徴だけでは把握として十分じゃなくて、本番で見過ごしてしまう可能性がある。だからもう一度ワクチンを打つことで、T細胞に別の特徴を覚えさせ、対応力を高めると。専門的には、T細胞のレパトア=レパートリー=を増やす、と言います。

 ですからまぁ、1度だけでも一定の効果があるとは思いますが、手間ではあるけれど、予防接種へは(3週間あけて)2度出かけていただく必要があるのです。
 ファイザー社製ワクチンが95%の有効性と言われているのは、この3週間開けての2回接種を前提とした治験の結果です。

 ちなみに95%の有効性って、どういうことでしょうか? 厚生労働省の「ファイザー社の新型コロナワクチンについて」を基に紹介しておきましょう。

 ざっと数字は丸めますが、ファイザー社の治験では、2万人にワクチン、同じく別の2万人にプラセボ(偽薬)を接種。2回目の接種後7日以降の新型コロナウイルス感染症の発症者を調べました。
 すると、ワクチン接種者で9人、偽薬では170人が発症したということです。9人に対して170人(約5%)。この比較(専門用語で言えばオッズ比ってやつですね)から、95%という有効性が算出されます(1-0.05=0.95)。
 仮にこれが接種者で100人、偽薬で2000人が発症したとしても同じ有効性になります。なので95%といっても100人のうち95人に効くという意味ではありません。

 日本人での治験結果は公表されていませんが(発症する人が少ないので比較試験がしづらいと思います)、代替的に、ワクチンを打った後に抗体が増えているかどうかを調べています。偽薬と比べて抗体の増加率が高かったことで、効果はあるだろうと推測されています。

変異株にも効くの?

 現在の第4波では、感染力の高い(1.3倍とも)変異株が猛威をふるっています。
 「N501Y」変異があるイギリス株がそれ。ウイルスのタンパク質の501番目のアミノ酸がN(アスパラギン)からY(チロシン)に変異している。

 せっかく泥棒の顔を覚えたのに、整形してしまっているようなものです。そのため、侵入されても見つけられない、あるいは手にグローブをはめようとしたのに形が変わっていてはめられない。その可能性はあります。

 ただこれまでのところ、実験室段階の研究ではありますが、ファイザー社製のワクチンはイギリス株に対してもほぼ変わらない効果を持っていると言われています。(山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信「ワクチン効果に対するウイルス変異の影響」)

 個人的に気になっているのは、これに加えて「E484K」変異を持つ南アフリカ株、あるいはブラジル株です。

 人口の7割がコロナウイルス感染症にかかり、集団免疫を獲得したと言われたブラジルのマナウスで、今年に入ってまた入院患者が急増、その原因がこの変異株にあるのではないかと注目されています。
 そうなると、従来型の免疫を獲得したとしても、この変異株にはそれほど効果がないということになる。

 あるいは、免疫がいつまで持続するかも気になるところです。

 先ほど紹介したファイザー社の治験では、約2万人対象に総追跡時間約2,500人年とあります。
 これを1人当たりにすると、ワクチン接種後1カ月半ほど調査した結果ということになります。なので、それ以上の期間が過ぎると有効性がどうなるのかは分かりません。

 ただ、このあたりについても、会社発表ではありますが、4月になって南ア型変異株にも効果がある、あるいはワクチンは半年後でも91.3%有効という報告が出されるなど、安心材料も出てきました(「ファイザー製ワクチン、半年後まで効果 南ア型にも有効(日経2021年4月2日)」、「ファイザーとBioNTech、COVID-19に対するワクチンの国際共同第3相試験の最新の解析結果に基づき、2回目接種から最長6ヵ月後まで高い有効性があり、重篤な安全性に関する懸念がないことを確認(ファイザー社4月5日報道発表)」)。
 でも、その矢先に感染爆発中のインドではE484QとL452Rというこれまた別の変異が多くを占めているとも。ウイルスの変異は早く、終息はまだ見通せません。

 仮にワクチンを接種したとしても、日常生活で感染症に気を付ける習慣は変わらず持っていた方が間違いないというのが正直なところです。

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