ポストコロナにおける自治体の「新常態」

 今回の提案では、前述した7分野に対して、25項目の提言を行いました。

 意識したのは「緊急仕様の日常使い」ということです。

 今回、丹波市が5月臨時会に提出した新型コロナウイルス緊急対策補正予算総額75億円のうち、国や県の支出を除く市の一般財源からの持ち出しは8億3,789万円と、かつてない規模でした。おそらく、他のどの自治体にも負けていないでしょう。

 しかし自治体財政は決して潤沢なわけではありません。日常的経費と別建てで緊急対策費を準備しておけるほど、自治体財政に余裕があるわけでは無いと考えます。

 とすれば、ポストコロナにおける対策は、危機対策費でありつつ、日常的にも役立つものとして活用していけるものでなくてはなりません。
 そうした考え方を前提としたのが今回の提言です。

 ご参考にしていただき、ぜひ、みなさんからもご提案をお聞かせください。

【1】複合災害を前提として備える

  1. 複合災害を想定したBCPを策定する
    感染症と水害等の複合災害を前提とした災害対策計画(BCP)を策定すること。高齢者や障がい者、子どもや妊婦等、特段の事情への配慮を盛り込む。また、段階別の視点も欠かせない。IBMでは緊急事態宣言解除後段階に応じた社員の出社数、出張制限、会議人数の制限等を明示している。10月以降でさえ出社は週2~3回、50名以上の会議には条件がつく。丹波市においても職員体制や施設の運用、イベント開催基準等、段階別の対応方針を見直し、備えておかなくてはならない。
  2. 自助から共助につながる仕組みを整備する
    自主防災組織単位での避難計画の作成を促し、分散型の避難に備えること。福知山市大江町蓼原自治会ではご近所宅への避難も含めた計画を立案している。避難所間や市との情報共有のためのパソコンやタブレット端末(オンライン会議システム)等を整備し、防災訓練等で活用する。また、防災用品は使用しつつ一定の備蓄を保つストック&フローの仕組みを作るとよい。
  3. 大震災との複合を想定する
    東南海地震が発生した場合、避難者の受入れを丹波市が担う可能性が高い。感染症が同時発生していた場合をシミュレートし、受入タイムラインを策定、廃校等を活用して準備を進めること。シミュレーションと都市交流を兼ねた、夏休みを利用した家族向け「避難キャンプ」なども検討されたい。

【2】仕組み化で医療を支える

  1. 感染症に伴う発熱外来を充実する
    インフルエンザの流行時期になると、発熱外来の負担が増す。医療従事者を守るため、ドライブスルー型の導入や抗原検査の実施を含め、幅広い検討を行うこと。
  2. オンライン診療の普及を図る
    オンライン診療は、医療者の負担を軽減するとともに、高齢者の来院負担も軽くする仕組みとして期待される。医師会とも相談し、診療所におけるオンライン診療の普及を図る必要がある。医療者の負担に見合う国の制度改革も働きかけること。
  3. 市民と連携した「丹波モデル」を確立する
    「県立柏原病院の小児科を守る会」をはじめとした医療と地域住民の連携は丹波市が先進である。この自覚のもと、市民団体や企業との連携を強化すること。防災用品の提供、医療従事者向けあるいは軽症者や経過観察者向けの宿泊施設などについて、平時から市内企業と協定を結びたい。そのためには連携窓口を福祉部、生活環境部等と分散するのではなく、一元的に管理することが必要である。

【3】経営のしなやかさ(レジリエンス)を推進する

  1. 民間企業のIT化の支援体制を強化する
    商工会と連携し、市内企業におけるIT化支援体制の強化を図ること。ECやオンライン予約、キャッシュレスの導入等が必要である。プレミアム商品券ではなく「たんばコイン」を利用した施策展開に切り替えるなど、行政側の取り組みも連携させてデジタル化の推進を市全体の動きにする。
  2. 飲食店の多チャンネル化を支援する
    テイクアウトやキッチンカー、前払い制など飲食店の販売手法の多様化を支援する。東京都が緊急対策としてフードトラックのリース助成を行ったことは一例である。
  3. 機動力のある貨物運送事業を実現する
    貨物運搬業の許認可は貨物トラックの保有台数など規制が厳しいものが多く、機動性に欠ける。国の制度改革を促し、テイクアウト運搬や買い物代行等の新規事業が起こしやすい改革を進めること。
  4. ツーリズムにおける環境認証取得を促進する
    「疎」を求める着地型ツーリズムの必要性が高まる。事業者への「サステイナブル・ツーリズム国際認証」取得の要請も高まる。事業者へのコンサルティングが可能なDMOの育成が求められる。

【4】分散型社会に適合した企業誘致

  1. ワークライフバランス実現型のリモート立地を売り出す
    オクラホマ州タルサでは、「タルサ・リモート」と銘打ったプログラムを提供している。ステイホームでも行動範囲を広くとれる地の利を生かし、立地企業の子育て支援型テレワークを促進するとともに、都市部の企業が丹波市内のサテライトを利用して従業員に週数日テレワークさせるような勤務体制の導入を売り出すこと。
  2. 生産拠点誘致を強化する
    国では「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」を準備している。この機会に、職員の増強を図ってでも訪問誘致に注力し、企業誘致の強化を図ること。また、オフィス空間を広く取りたいニーズが生じることから、従業員一人当たりの空間コストを誘致に活かすこと。
  3. 健康関連ビジネスを支援する
    スポーツや禅のようなヒーリングを含めた「ウェルネス」産業が注目される。新病院一帯をモデルゾーンとして産業振興を図る。域内の飲食業の感染症対策や地産地消等を「健康飲食店」として認証する、ウォーキング等のイベントを支援する、ミルネを活用した健診ツーリズムを実施するなども検討したい。

【5】新しい生活様式に適した移住施策

  1. フリーランス支援体制を構築する
    個人事業者の価値が見直されるとともに、その柔軟性が評価されている。フリーランス支援を施策に取り入れ、その情報交換の場やIT化の支援などを行い、育成と誘致を図る。
  2. 家族支援に力を入れる
    ステイホームの中で、家族で過ごす時間の再評価が進んだ。自然体験の場の提供や公園の整備を進め、丹波市は「家族で過ごせるまち」であることを広く周知させること。
  3. 関係人口ネットワークを充実する
    緊急事態宣言下で故郷に帰れない出身者に対して、燕市はふるさと産品を送付して共感を得ていた。成人式を利用する等により出身者との連絡網を築き、関係人口を増やすこと。また各種のオンラインプログラムが注目されていることから、丹波市発のオンラインコンテンツの創出を促すこと。

【6】市民からの「広聴力」を磨く

  1. 外部連携を促す体制を整備する
    今回、東京都による感染状況を見える化したサイトや大阪市の感染症対策施策一覧サイトは、オープンソースで公開していた。情報政策係を強化し、民間企業やシビックテック団体との協働を進めること。神戸市の「企画調整局つなぐラボ」の活動などが参考になる。
  2. 行政のデジタル化を進める
    行政のしくみのデジタル化を進める。庁舎を問わないサテライト勤務やテレワーク、オンライン会議等は業務効率化に役立つ。窓口手続きや相談をワンストップ化し、捺印を廃止することで市民にとっての利便性も高まる。渋谷区の取り組みなどが事例である。
  3. 外国語メディアを常設する
    外国語による情報発信メディアを創設し定着を図ること。コミュニティFMでの定期的な枠を外国語放送に衣替えするほか、ミニコミ誌やSNS等などを活用したチャネルが考えられる。
  4. 福祉の日常的な交流ルートを保持する
    子どもを対象とした配食事業は福祉と教育機関が一体となった良い事業であった。市内では高齢者向けの配食事業やこども食堂も行われている。これらのサービスと連携し、日常的な見守りチャネルを構築する。明石市が行っている、0歳児に対しておむつを無料配布する取り組みも参考になる。
  5. 広聴機能の強化を図る
    広報力の弱さの根本は「市民が知りたいこと」をキャッチできない「広聴力」にある。広報の概念に広聴を加えた体制を築くこと。

【7】学びを生涯止めない

  1. 小学校入学時からWi-Fi活用を促す
    入学時に家庭でのネット環境が100%揃うようWi-Fiルーターを貸し出し、長期休み中にオンライン登校日を設定するなど、日常からオンラインツールの活用を図ること。
  2. 予習型授業への転換
    オンライン授業では教える方法の改革が必要であることも明らかになってきている。予習型授業の研究を進め、導入を進めると良い。
  3. 図書の貸し出しのオンライン化
    図書の予約システムを改革し、感染予防が求められる時も図書館の活用が止まることが無いように工夫する。また、美術館の閉鎖時の対応も検討すること。
  4. 芸術文化活動のオンライン化支援
    人が集まれない中で、芸術活動が停滞することは市民の損失である。現在ある集客型のセミナー等については必要性を見直す一方、文化芸術活動はオンラインでできないかなど新しい手法を研究し、人が密集しなくてもイベントの目的を果たせる手法を開発する。

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