消防団に加入いただき、災害時の活動や防災のための啓発活動に携わっていただいている方々には感謝しかありません。
消防団員の方々は、非常勤の公務員という位置づけです。
こうした方々が、業務中に怪我をされるなどの場合の損害補償を的確に行うために制定されているのが、「丹波市消防団員等公務災害等補償条例」です。
消防団員だけではなく、一般市民も対象
この条例で補償の対象となるのは、それぞれ根拠法が違う次のようなケースです。消防団員はもちろん、非常時に協力いただく市民の方も対象になっています。
言い換えると、水害や災害の際に自治会長など地域の方々にご協力いただくのは、これらの法律が根拠になっているんですね。
・消防団員が公務で死傷した場合
消防団員で非常勤のものが公務により死亡し、負傷し、若しくは疾病にかかり、又は公務による負傷若しくは疾病により死亡し、若しくは障害の状態となつた場合においては、市町村は、政令で定める基準に従い条例で定めるところにより、その消防団員又はその者の遺族がこれらの原因によつて受ける損害を補償しなければならない。
消防組織法0226第24条第1項
・一般の人が消火活動や救急活動に協力して死傷した場合
第25条第2項(火災が発生したときに近くにいる人は協力してね)又は第29条第5項(緊急の必要があれば消防団員が指示して近くの人に協力してもらっていいよ)の規定により、消火若しくは延焼の防止若しくは人命の救助その他の消防作業に従事した者又は第35条の10第1項の規定により市町村が行う救急業務に協力した者が、そのため死亡し、負傷し、若しくは疾病にかかり又は障害の状態となつた場合においては、市町村は、政令で定める基準に従い条例の定めるところにより、その者又はその者の遺族がこれらの原因によつて受ける損害を補償しなければならない。
消防法第36条の3
・一般の人が水防活動に協力して死傷した場合
第24条の規定(水難地域や近くの人に協力させることができるよ)により水防に従事した者が水防に従事したことにより死亡し、負傷し、若しくは病気にかかり、又は水防に従事したことによる負傷若しくは病気により死亡し、若しくは障害の状態となつたときは、当該水防管理団体は、政令で定める基準に従い、市町村又は水防事務組合にあつては条例で、水害予防組合にあつては組合会の議決で定めるところにより、その者又はその者の遺族がこれらの原因によつて受ける損害を補償しなければならない。
水防法第45条
・一般の人が災害時に協力して死傷した場合
市町村長又は警察官、海上保安官若しくは災害派遣を命ぜられた部隊等の自衛官が、第65条第1項の規定(市町村長は災害時に地域の人や近くの人に応急措置に従事させていいよ)又は同条第2項において準用する第63条第2項の規定(市町村長が無理な場合警察官や海上保安官が代行できるよ)により、当該市町村の区域内の住民又は応急措置を実施すべき現場にある者を応急措置の業務に従事させた場合において、当該業務に従事した者がそのため死亡し、負傷し、若しくは疾病にかかり、又は障害の状態となつたときは、当該市町村は、政令で定める基準に従い、条例で定めるところにより、その者又はその者の遺族若しくは被扶養者がこれらの原因によつて受ける損害を補償しなければならない。
災害対策基本法第84条第1項
補償基礎額があがります
今回、「非常勤消防団員等に係る損害補償の基準を定める政令」が改正され、補償の基礎額が上がりました。
詳細は総務省からの「非常勤消防団員等に係る損害補償の基準を定める政令の一部を改 正する政令案に対する意見公募の結果の公示及び改正政令の公布」をご覧ください。
これに伴い、丹波市の条例も改正されます。
・議案23号 丹波市消防団員等公務災害補償条例の一部改正
損害補償は、この基礎額に、障がいの等級等に応じた倍率(100倍とか300倍とか)をかけて算出されますので、支給額も上がることになります。
詳細は割愛しますが、補償基礎額は、20年以上勤務された団長で14,200円、10年未満の団員で9,100円です。この9,100円が最低額(改正前は8,900円)です。
政令と同じことをなぜ条例で書き込んでいるの?
ところで、「丹波市消防団員等公務災害等補償条例」と「非常勤消防団員等に係る損害補償の基準を定める政令」を並べると、気付くことがあります。
丹波市の条例で、補償する種類や算定の基礎額など、国が政令で定めているものと同じ内容を定めていますね。
だから、政令が変わると条例も変えなくてはならない。
ダブる必要があるのか、と思いませんか。
基礎額の表などは政令を引用する形で条例化しても可能でしょう。そうすれば、国が改正したときに合わせて条例改正する必要がありません。
実際、豊岡市を参考に見ると、政令を参照されています。
(損害補償の種類等)
豊岡市消防団員等公務災害補償条例
第4条 第1条の損害補償の種類、金額及び支給方法その他補償に関し必要な事項については、この条例に定めるもののほか、非常勤消防団員等に係る損害補償の基準を定める政令の規定の例による。
どちらにするかは、それぞれの自治体の考え方次第ということではあります。
憲法、法律、政令、条例
整理だけ、しておきます。
政令というのは、内閣府が定めたものです。
第七十三条 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
日本国憲法
一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
二 外交関係を処理すること。
三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
四 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
五 予算を作成して国会に提出すること。
六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。
国の最高法規は憲法ですが、それに次ぐのが、国会で承認された「法律」。
これらに次ぐ、法律の実施にあたって必要なことを定めたのが政令です。
もちろん政令だからといって軽いわけではありません。
たとえば「地方自治法施行令」を例にとれば分かりますよね。
地方自治体の実務の多くがこの施行令に基づいている。
なお、政令は内閣府が出しますが、各省から出される省令がこれに続き、さらに規則が続きます。
条例は各自治体でつくるもので、国の定めには逆らえないので、国の法規の下に位置します。
今回の場合は、政府から命令はされたものの、確実な実行を図るには自治体側で条例として詳細を定めておく必要があると。
また理論的には国の基準より高い水準に金額を設定することもできます。そう考えると、自治体独自の条例内に基礎額表を持っておくことにも意味はあるでしょうね。