6月議会には、たいてい新年度の税制改正に伴う条例改正が提案されます。
税制改正と自治体条例改正のスケジュール
これは国会の審議スケジュールとの関係です。
たとえば今年、令和5年度の税制改正法は、2023年3月28日に参議院本会議で可決し、成立しました。これを受けて、「地方税法等の一部を改正する法律」が3月31日に公布されています(詳しくは総務省「令和5年度税制改正」参照)。
これに伴って各自治体では、地方税法改正を反映した税条例の改正を行います。
ただし、自治体の議会はたいてい3月末に定例会の会期末を迎えていますので、3月31日公布の内容を反映した議案を採決するには間に合いません。
そこで、自治体の税条例の改正は、その次の定例会である6月に提案される流れになります。
もっとも、税制改正の中には、4月1日から摘要するものも含まれます。
これを6月まで待っては間に合いません。どうすれば良いでしょうか。
そうです。「専決処分」ですね。首長が議会の承認を経ないで、条例改正を行います(専決処分については「議会を通さない市長による専決処分」をご参照ください)。
今年度の場合だと、次のような項目を含む専決が行われ、次の議会で報告されています(通常は6月定例会での報告ですが、今年度は4月に臨時会がありましたので、そこで報告されました)。
- 肉用牛の売却に係る課税特例の適用期限の延長
- 土地等長期譲渡所得に係る課税特例の適用期限の延長
- 大規模修繕工事を行ったマンションに対するわがまち特例の創設
- 軽自動車税環境性能割の臨時的軽減措置の廃止
- その他
今年の税制改正の内容は?
・議案43号 丹波市税条例の一部改正
主な内容は次の4項目です。
- 森林環境税の導入に伴う規定
これまで、森林環境譲与税として先に自治体に配分されていた税ですが、森林環境税としていよいよ個人からの徴収が始まります。詳細は後述します。 - 個人市民税に係る給与所得者の扶養親族等申告書の簡素化
扶養親族等申告書は毎年作成する必要があったのですが、異動がない場合、その旨を記すだけでよくなります。 - 軽自動車税の種別割にかかる税率区分改正
いわゆる電動キックボードの課税額が2,000円として明記されます(「経済産業関係 令和5年度(2023年度)税制改正のポイント」参照)。こちらも詳細は後述します。 - 軽自動車税の環境性能割及び種別割に係る賦課徴収の特例の見直し
ここにおける特例というのは、自動車メーカーが行った燃費・排ガス試験の不正についての特例です。ニュースになったのを覚えていらっしゃるでしょうか。環境性能を偽っていた結果、本来より税額が低かったケースがありますよね。その場合の差額は、自動車所有者ではなく、メーカーから徴収することになっています。その際の加算割合を、10%から35%に上げるものです。追徴額を引き上げて再発防止にという意図の税制改正です(「自動車税、追徴額を引き上げへ 日野不正で政府与党検討」等参照)。
森林環境税って何? その使途は?
さて。
丹波市にとっても関係の深いのが、森林環境税です。徴収するときの名前が「森林環境税」、自治体に配分されるときの名前が「森林環境譲与税」です。
どちらも「税」という名前でややこしいですが、自治体に配分される「地方交付税」と同じようなものだと考えてください。
この制度を簡単に言えば、森林の有する公益的機能を国民全体で支えるため、国民一人当たり年額1,000円を出し合い(森林環境税)、それを森林面積や人口等を基準に自治体に配分する(森林環境譲与税)、という仕組みです。
林野庁の「森林環境税及び森林環境譲与税」に詳しいので、そちらから概要図を引用します。
丹波市と森林環境譲与税、森林環境税
森林環境譲与税については、先に譲与が始まっており、丹波市にも令和元年度から歳入にあがっています。令和5年度予算で9,616万円の歳入見込みです。
対して納税義務者数は、均等割の納税者数と同じなので、約32,000人。ということは、国に治めているのは3,200万円。
丹波市にとっては入ってくる方が多い、ありがたい制度ですね。
何に使われているか、今年度予算で見ておきましょうか。
森林環境譲与税活用事業として、8,929万円が予算化されています。主な内容は次の通りです。
- 緊急里山林整備事業委託料 3,600万円
- 森林吸収源整備事業補助金 3,900万円
- 森林づくりビジョン策定業務委託料 660万円
- J-クレジットプロジェクト計画策定委託料 400万円
- 未整備林広葉樹転換促進事業補助金 230万円
- その他
一人1,000円の徴収はどのようにされる?
では、年額1,000円という税金はどのように徴収されるのでしょうか。
それを定めるのが、今回の条例改正です。
具体的には、個人市民税と併せて賦課徴収を行うこと、給与所得及び公的年金等からは特別徴収に含むなど。
住民税均等割と一緒に課税されますので、均等割が課税されていない方は、免税になります(総務省「森林環境税の非課税及び免除に係る留意事項について」参照)。
キックボードの税額は
今回の条例改正では、電動キックボードについても身近な内容です。
そもそもは、道路交通法の改正により、令和5年7月1日から最高時速20キロ以下の電動キックボードが「特定小型原動機付き自転車」という新たな区分になったことに伴います。
道路交通法の改正については詳しくは述べませんが、それまで原動機付き自転車、いわゆる原付(小型バイク)と同じだった電動キックボードを分けることで、要件を満たす電動キックボードなら免許不要、ヘルメット着用は努力義務、また車道だけではなく自転車レーンを走れるようになるなどの利便性が高まったのでした。
丹波市の税条例では、軽自動車等についての税率のうち、原動機付き自転車については、次のように定められていました(要約しています)。
ア)総排気量0.05リットル以下 年額2,000円
イ)2輪のもので、総排気量0.05リットル超0.09リットル以下 年額2,000円
ウ)2輪のもので、総排気量0.09リットル超 年2,400円
エ)3輪以上のもの 年額3,700円
で。
電動キックボードって3輪のものもありますよね。となると、排気量からはアに該当するのに、3輪であるばかりにエに該当するものがあり、税額が違ってしまうのです。
そこで、3輪のものでも「特定小型原動機付自転車」についてはエから除くと規定することで、すべてアの税額を適用しようというのが、今回の改正です。