インターネット20年の爆発を振り返る

 21世紀に入った当時。楽天が上場するなど、日本でのITバブルと言われた頃にあたります。『インターネットビジネス白書』という年鑑が発売されました。

 その2001年版と2002年版の執筆陣の一人として参加させていただいた当時の原稿です。
 当時、インターネット上の統計といえば『今日の雑学+(プラス)』と評価をいただいており、さまざまなデータを毎日紹介させていただいていました。
 その日々のデータを再編集して、白書に寄せさせていただいたものです。

 コンテンツは以下の通り。今は昔のデータですが、20年前のネットの状況を記した原稿として、ご紹介します。
 今振り返りつつ、雑感をいくつか。

  • 当時、日本のインターネット普及率は約2割弱。今では8割強と日常的なツールになりました。ただ、高齢者や低所得者層での利用率の低さが今も課題です。
  • パソコンの出荷台数は当時と変わらない、これは海外企業の躍進ゆえでしょうか。
  • パソコンの普及率は、当時は38.6%。2004年の87.2%をピークに近年は漸減しています。2005年に登場したスマホの影響が大きいです。
  • 当時のインターネット環境、個人事業所ではまだ8割がダイヤルアップ。今のような常時接続や専用線が普及するのは数年先です。
  • 企業でも、ウェブサイトの利用は情報発信が中心で、現在のように商取引に取り組むところはまだ少ない現状でした。
  • モバイルというと、「iモード」が爆発的ヒットした年。今ではそれって何?と思われる人の方が多いと思いますが。
  • 当時の世界でサイトの数は360万サイトだったそうです。今では18億サイトを超えています。「情報爆発」という言葉が流行したのは2005年頃でしたっけ?

【1】生活の中のIT革命
【2】日本のインターネット人口
【3】世界のインターネット人口
【4】デジタルデバイド
【5】企業のインターネット利用動向
【6】企業サイト運営の現状
【7】モバイルコンピューティング市場
【8】インターネットの「大きさ」
【9】インターネットビジネスの経済効果
【10】世界のEC市場規模
【11】日本のEC市場
【12】米国のEC市場
【13】日本企業によるECへの取組状況
【14】オンラインショップランキング
【15】ECサイトの収益性
【16】BtoBによるEC市場規模
【17】インターネット広告市場
【18】インターネット広告の効果


インターネットビジネス白書<2001>


ソフトバンクパブリッシング 原稿執筆2000年10月

【1】生活の中のIT革命

■パソコン出荷台数1000万台超過インターネット人気が市場牽引
 社団法人日本電子工業振興協会の発表によると、1999年の国内出荷と輸出を加えた日本のパソコン出荷台数が前年比130%、1064万台となった。周辺機器を含む総出荷金額は3兆329億円、うち本体出荷金額は2兆1046億円。
 パソコン1台あたりの価格は、マルチメディア総合研究所の調べによると平均20万3600円。前年より2万4000円ダウンしており、低価格化傾向が続いている。
 デスクトップPCとポータブルPCの比率では、モバイル利用の進展に加え、高機能化、液晶の大型化などもあってポータブルの伸びが著しい。日本電子工業振興協会によれば、2000年の第1四半期、デスクトップPCが136万2000台(前年同期比129%)に対し、ポータブルPCは137万7000台(同141%)。初めてポータブルPCがデスクトップを上回ったという。この事実は、ちょうど同時期に日本写真機工業会から発表された2000年上半期のカメラ出荷状況で、デジタルカメラの総出荷額が1716億円(398万台)と、スチルカメラの1447億円(1488万台)を半期ベースで初めて超えたというニュースと合わせ、時代の移り変わりを感じさせた。

■パソコンの普及率は38.6%、ワープロと肩を並べる
 Windows3.1が発売された1994年以降の店頭ルート向け出荷パソコンの累計台数は1544万台。これを日本の世帯数4681万世帯と比較すると、およその世帯普及率は33%ということになる。経済企画庁が発表した消費動向調査によれば、2000年3月末でのパソコンの普及率は38.6%となっているから、数字的にはほぼ合致するといっていいだろう。
 パソコンの普及率38.6%がどんな数字かというと、ファクシミリを上回り、ワープロやビデオカメラと肩を並べるレベル。ただしワープロは前年比マイナス、ビデオカメラは前年比1.6ポイント増と比較すると、前年度から9.1ポイント増というパソコンの伸びが際立っている。このことは総務庁の全国消費実態調査にみる主要耐久消費財の取得時期別所有数量割合で、パソコンがこの1年以内に購入した比率が高いことでも裏付けられよう。

■パソコンは生活に必須、年間支出金額も増加
 株式会社コンピュータ・ニュース社の消費者調査によると、PCが生活に必要かという質問に対し、全体の96.3%が「必要」と回答しており、「まったく必要ではない」と回答したのは0%という結果となった。PC、あるいはインターネットが生活に必須のものとして認識されてきている。
 総務庁の発表によると、パソコン・ワープロへの年間支出金額は、30歳未満で2万5000円弱、50歳台で1万5000円強と年齢が若いほど多い傾向が見られるが、平成元年から6年がそれほど変わらなかったのに対し、平成6年から11年にかけてはすべての世代で約2.5倍に増加している。家庭の情報化、IT革命はまさに今進行中といえるだろう。

【2】日本のインターネット人口

■日本のインターネット人口2000万人を超える
 平成12年度通信白書によれば、1999年末における日本のインターネット人口は2706万人、世帯普及率は19.1%となった。パソコンのほか、携帯電話端末、携帯情報端末、家庭用ゲーム機、インターネット接続機器を設置したテレビ受像機などいずれかを用いて、インターネット上のウェブコンテンツへのアクセス、または電子メールの送受信を行っている人を含んでいる。なかでも携帯電話端末単体でウェブまたは電子メールを利用している人が急増したことが、1999年のインターネット人口を押し上げたとしている。
 ただし、この推計に関しては民間各社からは多すぎないかという声が相次いだ。そこで、各社の数値を並べて比較すると、多くの民間企業が一致して、2000年半ばで日本のインターネット人口が2000万人を超えたと発表している。日本のインターネット人口が2000万人を超えたことにはほぼ疑いないが、それがどの程度かについては、「官民格差」が存在している。

■ホームユーザが増加1世帯あたり約1.5人が利用
 財団法人ニューメディア開発協会の推計によると、インターネット利用者の全体像は、企業利用者が485万人、学校での利用者が253万人、官公利用者が44万人。家庭での利用者が1421万人という。
 近年注目されるのが家庭での利用者の増加で、Nielsen//NetRatingsの調査から2000年1月から半年間の利用人口増加割合を見ると、自宅外での利用者数が116%だったのに対し、自宅での利用者数は155%となっている。ビデオリサーチネットコムの発表によれば1世帯あたりの平均利用人数は1.53人となっている。

■インターネット利用率の男女差は縮まる傾向
 Nielsen//NetRatingsの調査にも表れているが、これまで男性中心だったインターネット利用者の姿も変わりつつあり、女性の比率が徐々に増えてきている。2000年半ばの段階でインターネット人口における女性比率がほぼ4割に迫っている。ことに家庭での女性利用者の伸びが目立つ。
 通信白書で男女別に見たインターネット利用歴を確かめると、女性では1年未満という人が33.3%、1年から2年未満という人が27.8%。その後年数を重ねるとともに急速に減っていくのに対し、男性の場合は4年以上という人が26.0%ともっとも多くなっている。
 年齢構成比を見ると女性では20代が半数を占めており、この世代の女性がインターネット利用率の底上げに一役を担っていることがわかる。

■日本のインターネット人口は2003年に1億人を超える?
 日本のインターネット人口推計に関しては、通信白書で、2005年には7670万人に達すると推計している。さらに大胆な予測をしているのが、情報通信総合研究所。2003年には日本の世帯の60%以上、延べ人口で1億人以上がインターネットを利用するだろうという。その背景は、固定網による家庭でのインターネット利用の順調な普及に加え、学校へのインターネット導入などを背景にした家庭外でのインターネット利用の普及、また携帯電話を用いてのインターネット利用が急速に普及するためとしている。

■プロバイダの利用者数2強を第2グループが追う展開
 プロバイダの会員総数は1999年末時点で1688万人。トップの@niftyが2000年8月末現在で392万人と、400万人台を視野に入れている。ホームページサービスの開設数は16万件、法人アカウント契約件数は7万8994件である。一方のBIGLOBEも300万人台となり、順調に会員数を増やしている。マルチメディア総合研究所による会員数シェア推計では@niftyが21.9%、BIGLOBEが17.7%。
 それ以外のプロバイダではOCNがシェア6.5%と100万人の大台に乗った。財団法人ニューメディア開発協会の電子ネットワーク実態調査に最近の伸び率を見てみると、OCNの伸びが著しい。この一年で会員数をもっとも増やしたのは、OCNのほか、DION、ODNとキャリア系が目立つ。

【3】世界のインターネット人口

■世界のインターネット人口は3億人を超える
 NUAの「HOW MANY ONLINE」によると、世界のインターネット人口は2000年7月の段階で3億5980万人となっている。1億人を超えたのが1997年の末、2億人を超えたのが1999年の9月。そして3億人を超えたのが2000年の3月となっているから、明らかに増加速度は加速している。
 将来推計に関していえば、Computer Industry Almanacでは、2005年のインターネット人口を7億6577万人と予測している。地域別の増加割合では、今後北米以外の地域のインターネット人口が増えると予測されている。なかでもアジア・太平洋地域の伸びがめざましい。
 インターネット人口を言語別に見ると、Global Reachの統計にあるように英語圏のインターネットユーザが過半数を占めているが、この割合も今後下がっていくことと予測されている。

■日本のインターネット人口は国別2位、ただし利用率にすると第9位
 国別のインターネット人口では1億人を超えている米国が圧倒的にトップ。かなり引き離されての2位が日本。以降ドイツ、英国、中国と続く。
 たたしこれを普及率にすればまた違った光景が見える。Angus Reid Groupが過去30日間にインターネットを利用した大人の割合を国別にランキングしている。トップは米国で59%、以下カナダ、スウェーデン、オーストラリア、スイス、フィンランド、オランダ、香港と続き、日本は33%で9位。言い換えればそれだけまだ「伸びしろ」が大きいともいえる。このあたりをPhillips Groupによるアジア・太平洋地域のインターネット人口予測で確かめると、今後日本は他の各国と比較して大きく伸びると予測されている。それを上回ると予想されるのが中国。中国はベースとなる人口も多いので、日本のインターネット人口を抜く日がくるのは間違いないところだが、上記予測によれば2005年に中国が日本を上回るだろうとしている。

【4】デジタルデバイド

■米国では人種、年収などで情報化に差が存在
 米政府で大きな問題になっている「デジタルデバイド」。人種間での家庭でのコンピュータ普及率を比較すると、明らかに差がある。1984年と1998年を比較しても、その差は縮まるどころか変わらずに存在していることがわかる。これはインターネット利用率についても同様の傾向だ。
 年代別に比較すると、家庭でのコンピュータ普及率が高いのは25歳から55歳の層となっているが、その差はそれほど大きくは無い。また、米国では男女別のインターネットユーザはほぼ半々となっているので、性別、年代別でのデジタルデバイドは解消されつつあるといえる。
 また、地域別のコンピュータ普及率、インターネット普及率に関しても、西部でインターネット普及率が高い傾向が見られるものの、都市部と地方での差はそれほどみられない。
 差が大きく見られるのは、ひとつは学歴による差。そしてもうひとつは年収別だ。ともに高学歴ほど、また高収入ほどコンピュータ普及率は高い。
 また、家庭のタイプ別では、子どもがいる家庭でコンピュータ普及率が高い傾向がある。

■日本でも年齢別、年収別などでデジタルデバイドが存在
 日本のコンピュータ普及率においても、デジタルデバイドは見られる。総務庁の全国消費実態調査によれば、パソコンの普及率は米国と同様に25歳から55歳の層で高くなっている。
 差が大きいのはやはり年収別で、1000世帯あたりのパソコンの所有数量を調べると、平均は485台となっているが、年収が200万円未満の場合は134台であるのに対し、700万以上の世帯では500台を超えている。野村総研の「情報通信利用者の動向」に、パソコン保有世帯と非保有世帯の世帯年収の移り変わりがまとめられているが、1997年時点でのパソコン保有世帯と非保有世帯の年収を100とした場合、1999年までは変化割合にそれほど大きな差が無かったのに対し、2000年3月時点ではパソコン保有世帯が93、非保有世帯が83と差が広がっているのは気になるところ。
 なお、通信白書によれば地域別のインターネット普及率にも、特別区・政令指定都市・県庁所在地では24.0%である一方、その他の市では17.7%、町村では13.6%と明らかな差がある。

■世界的視野でも確認できる地域によるデジタルデバイド
 国連が発表した1999年版の「HUMAN DEVELOPMENT REPORT」は第2章を「New technologies and the global race for knowledge」として、ハイテク分野におけるデジタルデバイドについても検討している。先進国と発展途上国との間にはインターネット普及率にも差があり、発展途上国の現状を考えれば、各家庭での情報化よりも、コミュニティセンター等でのネット接続を推進することが現実的だとしている。
 Computer Industry Almanacのデータから、1000人あたりのインターネット人口について、2005年までの予測を拾っておこう。地域間格差は縮まっていく方向にはあるが、2005年の段階で北米が1000人あたり720人がインターネットを利用しているのに対し、中近東・アフリカでは26人と、その差は依然大きい。

【5】企業のインターネット利用動向

■企業でのインターネット利用率約8割に
 郵政省の通信利用動向調査によれば、従業者規模100人以上の企業でのインターネット利用状況は、78.3%となった。昨年より14.6ポイントの増加と、急速にインターネット利用が進んでいる。マルチメディア総合研究所による年商100億以上の企業を対象にした調査ではインターネット利用率は89%になっており、大企業では2000年中に95%の利用率になるものと予測している。
 電子メッセージング協議会が従業員500人以上の企業に対して電子メールの導入率を尋ねた調査があるが、その結果をみると、1994年度の30.9%から年々増加し、1999年度は89.5%に達している。各企業本社におけるオンライン端末の配備率では、1人に1台という企業が41.9%。2人に1台が15.4%となっている。オンライン端末の1人1台体制も徐々に進んでいる。

■中堅・中小企業や小規模企業で高いインターネットへの意識
 中堅・中小企業での電子メール利用率は76.9%となっていることが電子メッセージング協議会の調査で明らかになった。トップ経営者全員が電子メールを利用していると答えた企業が38.9%と昨年より10ポイント以上増加しており、トップダウンで電子メールが社内に浸透していくことを示している。
 中小企業白書によると、ホームページを持っている企業は大企業では66.3%あるのに対し、中小企業では36.9%、小規模企業では28.4%。中小企業のホームページ開設率をさらに業種別に見ると、製造業やサービス業では50%に迫ろうとしているのに対し、小売業では17.9%、卸売業では23.1%と低くなっている。
 将来への意識の高さは日本企業の特徴となっており、日本アイ・ビー・エムによる先進7カ国の小規模企業調査では、社外と接続されたオンライン小規模企業の割合は日本は27%で、イタリアに次いで低い水準だったものの、「インターネットが将来不可欠になる」とする企業は23%と、7カ国平均の12%よりずば抜けて高くなっている。

■SOHOではインターネットは不可欠接続はダイヤルアップが中心
 日本テレワーク協会によると、日本企業のテレワーク人口は2000年時点で246万人。うち自宅で仕事をしているという人が67.1%にのぼる。これに自営型のいわゆる狭義のSOHOを加えると日本でもかなりの人数が在宅勤務をしていることになる。
 三和総研の調査ではSOHOのインターネット接続環境はアナログまたはISDNによるダイヤルアップ接続が合計で80%となっている。ただし、業務上128kbps以上の通信速度を求める利用者が増えており、今後通信料金が低廉化するとともにより高速の接続形態に移行することが予測されている。

【6】企業サイト運営の現状

■企業ホームページの利用法は会社案内、製品案内が中心
 ユアブレインが実施した企業ホームページ利用に関する意識調査によると、企業ホームページの内容は「会社案内」が93%、「製品・サービス情報提供」が82%。人材募集や製品・サービスの販売や予約は43%となっている。まだ初期型の情報提供のみの企業サイトが多いようだ。
 このあたりを郵政省の「情報通信利用動向調査」で補足すると、「会社案内・人事募集」ではホームページによる利用が14.5%と電話やFAXの9.3%より高くなっており利用が進んでいることを感じさせるが、「申込みや届出の受付」はホームページが1.9%、電子メールが6.0%。郵便や電話、FAXと比べるとまだまだ利用が進んでいない。また「意見や応募の受付」でも郵便や電話がまだ中心で、情報の発信はともかく、受信となると企業はその他の通信手段を選択している様子がうかがえる。
 日本能率協会が実施した経営トップを対象にした調査でも、インターネットの利用分野として「営業・宣伝」には68.5%の社長が現在実施していると回答しているのに対し、「消費者向け販売」は28.7%、購買・仕入れなどの企業間取引は24.5%となっている。

■人材や更新頻度など運営面での課題は多い
 ウェブワークスが行った英文ウェブサイト実態調査によると、企業の英文サイトの最初の5ページを調査した結果、78%のサイトで英文編集ミスが見つかったという。新着情報の更新が1カ月以内に行われているのは20%、IRセクションがあるのは55%、環境情報セクションがあるのは34%と、充分なメンテナンスが行われているとはいえない。
 もっとも間違いが多いのはなにも日本企業に限ったことではないようで、ParaSoft CorporationによるFortune 100企業のウェブサイト調査では、総数29万2357ページの中にリンクエラーが8万4302個所、3.5ページにひとつの割合で見つかったという。HTMLコーディングの間違いについては1ページにつき平均12個所という結果。
 前述のユアブレインの調査ではホームページ運営に関する悩みとして「更新がなかなかできない」が40.9%、「構築・運用管理のための人材養成・教育が難しい」が38.6%、「コンテンツ企画に関して社内協力が得にくい」22.7%などとなっている。
 なお同調査からホームページ製作体制に関する設問をみてみると、「代表者」22.7%、「社内スタッフ」50.0%、「社外スタッフとの共同作業」18.2%、「完全外注」6.8%となっている。

■今後は双方向コミュニケーションや営業支援にホームページを利用
 ホームページ運営においての将来の目標としては「双方向コミュニケーション」をあげる企業が61%、「営業支援」をあげる企業が55%となった。
 米国ではどうか。米国広告主協会(ANA)による調査結果をみると、1999年の利用法としては「製品・サービス情報」と「企業案内・ブランド認知」がそれぞれ過半数となっているが、2000年ではこれらはそれぞれポイントを減らし、逆に「ブランドロイヤリティの構築」「顧客サービスの提供」が大幅に伸びている。米国では一歩先にいわゆるカスタマーリレーションシップマネジメント(CRM)関連に企業サイトを活用しようという動きが出ている。

■半数の従業員がネットを私的利用、監視体制を強める雇用側
 Angus Reid Groupの調査によると、従業員の46%が私的目的のために職場からネットにアクセスしているという。うち55%は電子メールで私信を送受信するため。Computer Economicsではこうしたインターネットの私的利用により、米国企業は年間53億ドルの損失を被っていると試算している。Elron Softwareの調査では従業員の4人に1人が企業機密情報を電子メールで受け取ったことがあると回答しており、リスクマネジメントの面でも無視できない問題になっている。
 これに対し、米国経営者協会の調査では、27%の企業が従業員の電子メールをチェックするようにしていると回答しており、1997年の15%から増加している。従業員の側でも雇用者が自分たちのネット利用を監視することに対しては寛容なようで、Angus Reidによればインターネット利用ができる従業員の73%が監視について理解を示しており、一般の57%よりも高くなっている。
 同調査によれば、個人利用に関して企業として規則があるところは51%。日本ではインターネット協会による調査でセキュリティポリシーがあると回答した企業が41.7%。質問の中身が多少違うが、職場でのネット利用に関しては米国の方が敏感に対応しているようだ。

【7】モバイルコンピューティング市場

■iモードの爆発的普及で広がる携帯インターネット接続
 郵政省の「インターネット接続サービスの利用者数」から携帯・自動車電話端末によるインターネットサービスの利用者数を見ると、1999年末で367.3万人だった利用者が、2000年3月には749.9万人、6月末には1272万人と急激な増加を見せている。
 背景には1999年2月22日のサービス開始から532日目、2000年8月6日に1000万契約を突破したiモードの普及がある。2000年に入ってからは毎月100万契約のペースで増加しており、社会現象とさえなった。これに伴いiモードサイトの数も増加しており、2000年8月段階で1万8700サイトとなっている。
 なお、平成12年度版の通信白書によれば、日本のモバイル通信の対人口普及率は41.0%で、北欧諸国や韓国・香港などに次いでいる。米国や独仏等はまだ20%台となっており、日本が先行する形。

■モバイルコンピューティングも進展、企業での導入率も36%に
 モバイルコンピューティング推進コンソーシアムの発表によれば、移動電話の利用者数は2000年度で6578万人、2003年度には8004万人と予想されている。その利用法はさま変わりしつつあり、1999年度において3:7だったモバイルコンピューティング利用者と音声利用者の利用比率は、2000年度には4:6に、2002年度にはついに逆転し、2003年度には7:3近くになると予測されている。
 企業におけるモバイルコンピューティングも進展している。日本能率協会の資料によれば、1997年にようやく10%に達した企業でのモバイルコンピューティング導入率が、1999年には28%、2000年には36%になると予想されている。電子メッセージング協議会の資料を参照すると、大企業におけるモバイルシステムの導入は、「会社規模で導入している」のが4.4%、「一部で導入している」が32.7%となっている。計画中の企業を含めれば、6割の企業でモバイルシステムに対して積極的な姿勢を示していることになる。

■モバイルコマース市場は2005年に1兆1036億円
 モバイルコンピューティング推進コンソーシアムによれば、1999年度のモバイルコンピューティング市場は、メールやデータ通信、コンテンツフィーなどの通信用途が2153億円、ノートパソコンや携帯情報端末などのモバイル端末市場規模が4963億円としている。
 通信白書ではやや違った視点でモバイル市場をとらえている。まず1999年のモバイルコマース市場として42億円としている。これは通信料金等を含まない携帯端末による商取引の規模。今後携帯電話端末がJava対応するなどしてクレジットカード番号送信が安全に行えるなど決済面の向上などにより、2005年に1兆1036億円まで広がると予想している。
 一方、モバイルコマース関連市場として1999年は1687億円と計算している。通信料金や端末の費用はこちらに含まれる。2005年にはこちらが3兆4170億円と予測している。

■携帯電話利用は文字中心にチケット予約などに高いニーズ
 日経BP社の「携帯ネット市場調査」によると、携帯電話の利用法としてはメール利用が増加し、特に女子学生では60.7%がメール利用となっている。
 今後期待される文字情報サービスとしては、電子メッセージング協議会の調査で、現在は利用率が低いチケット予約やトラベル予約などに高いニーズがある。

■ダイヤルアップ接続に並ぶ携帯接続
 郵政省によるインターネット接続サービスの利用者数調査によると、2000年6月末の段階でダイヤルアップ接続の利用者が1327万人に対して携帯等での利用者が1272万人とほぼ並ぶ水準となった。1999年末からの伸び率ではダイヤルアップの125%に対し携帯等は346%となっており、2000年中に逆転することは間違いない。
 ダイヤルアップのうちISDN回線の利用者比率は野村総研の調査によると2000年3月時点で35.2%。利用以降も含めると過半数となるが、今後ADSLの伸び等ではこの比率も前後しよう。

■ブラウザ戦争の「終わり」
 1999年暮れ、それまでブラウザシェア調査を行ってきたZona Researchが「時代の終わり」を宣言した。Internet Explorer利用者が64%、Navigatorが36%。ふたつの寡占状態となり、かつてのような多くのブラウザによる戦国時代は終了したという見方だ。
 パソコンの解像度では17インチモニタに相当する1024×768ピクセルのサイズで見る人が1999年1月時点での約20%から10月時点での約25%に上昇し、4人に1人が高解像度でのインターネット閲覧をしているとStatMarketより発表があった。ただし、ノートパソコンで主流の800×600ピクセルのモニタ利用者はノートパソコンの普及を反映して55%前後の比率を保っている。
 また同社調査によるブラウザのプラグイン導入率では、Live Audio、Flash、AVIが7割前後となっており、QuickTimeは約48%、Acrobatは約35%である。

【8】インターネットの「大きさ」

■世界のインターネットホストは7000万台を超える
 世界のインターネットホスト数を定期的に計測しているInternet Domain Surveyの結果によると、2000年1月時点でのインターネットホスト数は約7240万台。1999年7月が約5622万台だったから、半年で130%。この1年間、伸び率が再び加速してきているようである。
 JPNICに届け出られた日本のドメイン獲得数は、2000年8月に20万を突破した。こちらの伸び率も、世界のホスト数とほぼ同じ曲線を描いている。
 ちなみに.COM、.NET、.ORGドメインを管理している米国のNetwork Solutionsの統計では、国内からが69%、海外からが31%となっている。傾向としては海外からの登録が増加傾向にあるようだ。1顧客あたりのドメイン保有数を見ると2000年1月段階でおよそ2ドメイン。この数は今後増加していくものと考えられており、「ドットコム」目指して世界からドメイン登録が殺到しているさまをうかがわせる。

■メールボックスは1人1つ以上、インスタントメッセージも成長
 Messaging Todayの推計によると、1999年末時点での世界のメールボックスの数は約5億6917万という。単純計算でもインターネット人口の約2倍の数のメールボックスがあることになるが、実際、米国ではビジネスユーザは平均で1.5の、またホームユーザは平均で4つのメールボックスを持っているという。
 メールボックスの種類では、4割強は企業によるものだが、ウェブメールも3割強を占める。
 一方、インスタントメッセージ分野ではICQの人気が高いが、AOLの発表によると、当時4000万ユーザを獲得していたICQにAOLが提供しているその他のインスタントメッセージングサービスを加えたインスタントメッセンジャーによるやりとりが、1999年7月に7億5000万を超えたという。これは1日5億通といわれる米国内での郵便のやりとりをはるかに超えている。その後1999年末にICQの登録ユーザは5000万を超えた。

■ウェブページは20億ページ超、日本国内には3850万ページ
 Cyveillanceの発表によると、インターネット上には2000年7月現在21億の公開ページが存在し、1日700万ページのスピードで増えているとしている。先にNEC Research Instituteが発表していた1999年2月段階でのコンテンツの内容調査では、その時点での8億ページのうち83%が商業利用のページとしていた。なお、この調子でページが増えていけば、2001年4月には40億ページを超えることになる。ただし、BrightPlanetの発表では、データベースによって書き出されるようなより深いところまで探れば、実際にはインターネット上の文書は5500億ページあるともいう。
 日本国内(jpドメイン)下でのページ数は、郵政研究所によれば、1999年8月段階で3850万ページ。1日あたり5.6万ページ増えている計算になるという。1ページあたりの画像数は増えているが、音声や動画はそれほどの変化は無い。
 いわゆる「ウェブサイト」の数としては、360万サイトだとOCLCからの発表にある。そのうち「工事中」などの無意味なサイトが100万サイト、アクセス制限がされているサイトが40万あり、公開されていると考えられるのは220万サイト。1サイトあたりの平均ページ数は129ページだが、上位2万5000サイトでコンテンツの50パーセントを供給しているという。

【9】インターネットビジネスの経済効果

■インターネットビジネスの国内市場は21兆1756億円
 インターネットビジネスの範疇について、平成12年度版の通信白書では大きくインターネットコマースとインターネット関連ビジネスに分類している。
「インターネットコマース」とは、「TCP/IPを用いたネットワーク上で財・サービスの受発注を行う商取引」と定義。それをさらに消費者を対象にした「最終消費財市場」と、企業間における原材料の取引を意味する「中間財市場」に区分している。1999年の実績は、インターネットコマースのうち最終消費財市場が3500億円、中間財市場が14兆4298億円。
 次に「TCP/IPを用いたネットワークの構築及びインターネットコマースに関わる事業」という、インターネットの普及により直接的に影響を受けているビジネスを「インターネット関連ビジネス」と定義。市場規模を6兆3958億円と推計している。1999年のインターネットビジネス規模は合計21兆1756億円ということになる。

■米国では4つのレイヤーにわけて分析、5239億2300万ドル市場
 米国のインターネット経済については、Internet Economy Indicatorsが4つのレイヤー(層)に分類している。
 最初のレイヤーがインターネット・インフラ層。ISPやインターネット用のハードウェアなどを含む層だ。1999年の市場規模は197億8530億ドル。
 次にウェブデータベースやマルチメディア開発ソフトウェアなどを含むインターネット・アプリケーション・インフラ層。101億3040億ドル。
 3番目がインターネット・インターミディアリー層。これはインターネット広告やポータルなどを含む層。96億8090万ドル市場となっている。
 最後に、インターネット・コマース層がある。オンラインショップ等はここに含まれるが、市場規模は171億4730億ドル。
 1998年から1999年にかけての各レイヤーの伸び率では、インターネット・コマース層が72%、インターネット・インフラ層が68%と続いている。各レイヤーを合計したインターネット経済総額では5239億2300万ドルとなっている。

■インターネットの雇用効果はITによる過剰雇用削減を補う
 Internet Economy Indicatorsでは、各レイヤーがもたらす雇用効果をも計算しており、1999年は合計で248万人の雇用を生み出したとしている。うちわけはインフラ層とアプリケーション層、コマース層がそれぞれ全体の3割前後ずつを生み出し、インターミディアリーが残りの1割強となっている。
 日本における同様の調査は日本情報処理開発協会から発表されている。それによると、電子商取引による業務効率化など情報化の影響により163万人の雇用削減が行われるとしているが、逆に情報通信産業や電子商取引によって創出される雇用数も249万人あるとしている。情報化による雇用拡大効果は、トータルで86万人ということになる。

【10】世界のEC市場規模

■世界のEC市場規模は6570億ドル、その8割近くが北米に集中
 Forrester Researchによる推計によれば、2000年の全世界のEC市場はB to B及びB to C合計で6570億ドルにのぼる。その大半は北米でのもので、米国の4887億ドルにカナダ、メキシコを加えると実に世界の77.5%をこの地域で占めることになる。日本は319億ドル。全世界の約5%を占めている。
 今後の予測を見ると、年々70%から80%という高い伸びが予想されており、2004年には6兆7898億ドル市場になるものと考えられる。この時点での総売上に占めるECの比率は8.6%になる。北米の占める比率はこの時点で約50%となり、米国の比率は全体に対してこの時点でようやく半分をきる。
 eMarketerによる予測では、B to C分野での市場規模は2000年で2334億ドル。2003年で1兆4428億ドル。前述Forresterの数値とは差があるが、米国が占める割合については同様の傾向となっている。

■B to CのEC市場規模は312億ドル、前年から大幅に増加
 Gartner Groupの発表によると、1999年度の全世界のEC市場規模は312億ドルという。1998年が112億ドルだから、約280%という高い伸びをみせたことになる。この伸びは今後も持続し、2003年には3800億ドル市場になると予測している。
 調査会社各社による1999年のB to C市場の推計をNUAのまとめたグラフから孫引きしておこう。Boston Consulting Groupによる年間360億ドルからDirect Marketing Associationによる39億ドルまで、各社によって差がある。おおよその中心帯は、Yankee GroupやIDCによる242億ドルやeMarketerやForrester Researchによる180億ドル強など、おおむね200億ドル前後となっている。

■インターネット利用者ひとりあたりEC規模は平均1752ドル
 ここで、前述のForrester Researchによる2000年のEC市場に、世界のインターネット人口の章で紹介したeTForecastsによる各国の2000年インターネット人口予測を並べ、インターネット利用者ひとりあたりのEC市場規模として算出してみよう。世界全体のEC市場規模6570億ドルを世界のインターネット人口3億7490万人で割ると、ひとりあたりのEC市場規模は1752ドルとなる。日本円にして20万円弱となる。
 これを国別に見ると、世界平均を超えているのは米国だけで、ひとりあたり3675ドル。オランダが1204ドルで続き、日本は1186ドル、以下カナダ、フランス、ドイツと続く。
 Gartner Groupによる「E-Business Opportunity Index」では、横軸にインターネット普及率、縦軸に人口あたりのEC規模をとって各国の比較をしている。いずれにせよ、現状米国のひとり勝ちの状態ではある。

【11】日本のEC市場

■日本の消費者向けEC市場は3500億円、前年比210%
 平成12年版通信白書によると、1999年のインターネットコマース最終消費者市場は3500億円となっている。前年が1665億円だったので、約2.1倍の伸び。1997年が818億円だったので、毎年倍増の勢いである。電子商取引実証推進協議会による統計でも3360億円となっているので、推計値はほぼ一致している。
 うちわけを電子商取引実証推進協議会の発表に見ると、金額が大きいのが自動車の860億円と不動産の880億円。これにPCの510億円、旅行の230億円が続く。構成比にすると、不動産と自動車がそれぞれ26%、PCが15%、旅行7%、金融5%、食料品5%、衣類4%となる。
 1998年から1999年にかけての伸び率を分野別に見ると、43倍という自動車が目を引く。次いで金融が11倍。サービスや食料品が約4倍となっている。逆に伸びが少ないのが書籍・CDや衣類、エンタテインメントなど。ただしそれでも2倍の規模にはなっている。

■2004年には5兆5420億円、全市場規模の2%がECに
 電子商取引実証推進協議会による1999年の数字から全体の取引額におけるECの比率、つまり電子商取引化率を比較すると、PCの3.6%が群を抜いており、自動車の0.9%、書籍・CDの0.3%、不動産や金融が0.2%などとなっている。全体では0.11%。
 今後の伸びとしては、2004年の電子商取引化率は全体の2%になると見られており、高いのがPCの26.7%、自動車の14.5%、旅行の7.7%、書籍5.3%、金融5%となっている。ちなみにこのときのEC市場規模は、5兆5420億円と予測されている。
 通信白書の予測では、2005年のEC市場を7兆1289億円と予測しており、2004年から2005年にかけての伸びを見込むと、ふたつの代表的な予測数値はほぼ一致していると見てよさそうだ。

■オンラインショップは毎年5000店舗ずつ以上増加
 オンラインショップの出店数を「日本のサイバービジネス統計」から見てみると、半期ごとに2500店舗以上はコンスタントに増えている。取扱商品のカテゴリとしては、フード&ドリンクがもっとも多く、次いでカルチャー&ホビー、ファッション&アクセサリーと続いている。
 参考までに、1999年までの新規出店数を単純合計した2万1634店舗数で、1999年のEC市場規模3500億円を割ってみると、1店舗あたり1600万円強となる。1998年の同様の計算が約1200万、1997年が992万、1996年が961万なので、各店舗の収益も毎年順調に伸びているものと推測される。
 同様の計算を通信白書掲載のインターネット人口に対して行ってみると、ひとりあたりのEC市場規模は、1997年が7082円、1998年9829円と順調に拡大し、1999年には1万2934円と1万円の大台にのっている。

【12】米国のEC市場

■米国のEC市場は331億ドル、2000年には610億ドルに
 Shop.orgとBoston Consulting Groupより全米のオンライン小売業の市場規模が発表された。1999年の消費者向けEC市場を331億ドルとし、全小売市場の1.4%にのぼるとしている。この他、オフィス用のサプライ用品やコンピュータソフトなど、企業によって購入された額が別に131億ドルあるともしている。
 同調査によれば、2000年は85%の伸び率で、610億ドル市場になると予測している。ここには、個人間オークションなど後述する商務省調査では対象外となっている68億ドルも含まれるとしている。

■定番の調査が米商務省と全米小売業協会から発表
 米国のEC市場については、代表的なふたつの機関から、それぞれ違ったアプローチで統計が発表されるようになった。ひとつは商務省からで、全米の電子商店に対するアンケートから市場規模を推測している。更新は四半期ごと。店舗側へのアンケートなので、当然米国外への販売も含んでの数値になる。その代わり、オンライン旅行代理店や個人間オークションなどは含まれない。
 もうひとつ、全米小売業協会による推測は消費者サンプルへの質問をベースにしている。こちらは1カ月ごとの発表となっている。

■第2四半期も好調だった米国EC市場、毎月順調に推移
 商務省の発表によると、EC市場は1999年第4四半期が5.2億ドル。通常の小売市場はクリスマスシーズンが終了する年明けは売上が下がるのだが、EC市場はそれが見られず、2000年第1四半期も前期と同水準の5.2億ドル。第2四半期になって5.5億ドルと順調に伸びている。
 全米小売業協会の発表を並べてみると、2000年に入って、1月が2.8億ドル、2月は2.4億ドルと下がったが3月から3億ドルを超し、6月7月は4億ドルとなっている。

■カテゴリ別では旅行関係の人気が高い米国市場
 全米小売業界の資料から分野別の数字を拾ってみる。米国では航空券やホテル予約など旅行関係の人気が高い。続いてコンピュータ関連や電化製品だ。ひとりあたりの消費額は月間290ドルという。
 なお、実際のEC店舗数については、商務省のレポートに200万という数字が見える。また、Keenan Reportによると10人以下の従業員、年間300万ドル以下の売上という小規模オンライン商店の数が今後増えていくだろうとしている。

【13】日本企業によるECへの取組状況

■日本企業の電子商取引化率は約20%、B to CよりB to Bに比重
 郵政省の通信利用動向調査によると、従業員100人以上の企業のうちインターネットを利用している企業は78.3%で、うちインターネットを利用して販売活動を行っている企業は25.4%となった。通して計算すると、全企業のうちインターネットを利用した販売活動を行っているのは約20%ということになる。もっとも、決済までインターネットで行っている企業は1%にも満たない。
 2000年4月に発表された日本情報システム・ユーザー協会の資料では、B to Cを行っている企業はまだ10%となっている。ホームページを開設している企業は79%あるから、ウェブサイトそのものではなくECへの取り組みが慎重であることがわかる。一方でB to B(企業間取引)については44%の企業で行われており、一歩進んでいる。ただし中心は旧来型のEDI(電子データ交換)であり、インターネットを基盤とするものはB to B実施企業のうちまだ38%となっている。

■業種や規模によって差、中小企業で低い電子商取引化率
 大蔵省関東財務局が管内の企業を対象に行った調査を見ると、電子商取引の利用状況として、業種や規模によって明らかな差があることがわかる。電子商取引利用率の高い旅館等の宿泊サービス業や小売業では20%台後半の利用率を示す一方、製造業では10%を切っている。
 また規模別では、大企業で14.5%の利用率となっているが、中小企業では6.0%。電子メッセージング協議会の資料で補うと、従業員500人以上の企業においては、ECを行っている企業が33.7%、これに必要性を感じているという企業も加えると55.9%と過半数が前向きの姿勢を持っているのに対し、中堅・中小企業では、電子商取引を実施中の企業が4.4%、準備中の6.6%と「そのうち実施する」11.4%を加えてもまだ2割強。将来を含めて差が感じられる。

■EC実施企業の3社に1社は収益が目的、3年後には5社に1社がEC割合10%以上を予定
 野村総研が資本金1億以上、従業員1000人以上の企業を対称に行った調査では、全体の12.2%、EC実施企業のうちではほぼ3分の1が収益を目的としてECを実施していると回答している。
 日本情報処理開発協会による調査研究では、B to Cの電子商取引に関しては、現在のところ65.9%の企業が自社の総売上高に対するEC割合は1%未満だとしている。3年後には、1%未満とする企業は22.5%に減り、逆に22.5%の企業が10%以上の割合になる予定だとしている。
 B to B分野においてはこうした傾向がさらに顕著で、現在は58.0%の企業が1%未満だとしているものの、3年後には30~50%未満とする企業が23.9%、50%以上とする企業も11.9%になっている。
 なお、日経マーケットアクセスが国内の上場/店頭公開企業及び年商200億円以上(卸・小売は500億円以上)の企業に対してアンケートした結果、インターネットビジネス情報化投資額は、1社平均2960万円だった。

■ECサイトは年間数十億ドルの機会損失?
 Datamonitorによると、顧客に対して充分なサービスができなかったために途中であきらめられるケースがかなりあり、中止されたオンライン購入の7.8%は、顧客対応さえしっかりできていれば完了されたはずで、金額にすると年間61億ドルにのぼるとしている。
 Creative Goodからも、同様の理由で年間190億ドルの機会損失があると推測している。また、Zona Researchからは、純粋にページが重いため年間43億5000万ドルの売上が危機に瀕しているとしている。
 Andersen Consultingが1999年のホリデーシーズンに実際にためしたところでは、購入しようとしていた480ギフトのうち注文を完了させることができたのは350にすぎなかったという。また、Jupiterによる電子メールによる問い合わせ実験では、46%の企業が回答しないか返事まで5日以上かかるか、そもそも問い合わせ先のメールアドレスがわからなかったりしたという。

■3割のECサイトに表示義務違反
 通産省が行った第3回インターネットサーフデイの結果、「訪問販売等に関する法律」に規定された表示義務を遵守しているサイトは70.5%だったという。
 米国の連邦取引委員会による世界各国のウェブサイト調査でも、注文のキャンセル方法について明記されたサイトは9%しかなく、返品に関するポリシーを掲げていたサイトでさえ26%しかなかったとしている。

【14】オンラインショップランキング

■米国トップ企業は年商10億ドル規模、eBayのランキングには賛否両論
 全米小売業協会が、オンラインショップのトップ100企業を発表した。ただし、売上推計手法は、消費者側に対する調査に基づいたもの。このため、たとえばeBayのような個人間でのオークションを仲介するようなサイトでは、従来の定義では手数料売上だけだったのが、全米小売業協会の統計では商品販売価格まで含まれるなど、これまでと大きな差があるものも登場しており、論議を呼んでいる。
 たとえば、今回トップに立ったeBayの売上なら、従来からの手法なら1999年の売上は2億2470万ドルのところ、全米小売業協会の統計では11億ドルから13億ドルと大きな差が出ている。一方Amazon.comのような消費者が使う金額が企業収益にあるていど反映するような場合では従来統計16億3980万ドルに対し10億ドルから11億ドルとその差は小さくなる。ただ、いずれにせよランキングの上位に来ている企業は多くのユーザを集め、人気を呼んでいる企業であることは間違いない。
 また、同協会のランキングでは、顧客1人あたりの売上などもでているところが目新しく、注目される。DELLのようなパソコンショップでは2500ドル強、Amazon.comでは158ドルなど、それなりに納得できる数字ではないだろうか。

■オーディエンス調査からはAmazon.comがトップ
 PC Dataからもオンラインショップのトップ20ランキングが発表されているが、こちらはオーディエンス調査をもとに毎月の各ショップでの購買者数を調査したもの。Amazon.comが181万人と圧倒的な強さを見せている。重複の無いユーザ数は約1813万人とされており、購買率では10%を誇る。これを上回る購買率を獲得したのが購買者ランキング2位のticketmaster.com。5位のdrugstore.comの購買率も14.4%と高い。

■独自の視点で評価するオンラインショップ評価サイト
 オンラインショップランキングといえば、専門の評価委員によるものも増えてきた。参考までに代表的な評価サイト「Forrester Powerrankings」と「Gomez.com」の同一分野でのランキングを並べておこう。いわば各分野での定番がそろった形。
 日本では日経BP社による「BESTShop」が登場した。トップランキングには個人商店も登場してきており、独特の文化を感じる。

【15】ECサイトの収益性

■オンラインショップの3分の1以上が赤字
 富士通総研の「インターネットショッピング調査」によれば、インターネットショップのうち、単年度黒字とする企業は39.0%、収支均等とする企業が21.2%、赤字が32.2%となっている。インターネットショップの3分の1以上は赤字経営ということになる。具体的な売上額としては、平成11年版の通信白書に消費者向けオンラインショップの70.5%が月平均50万円未満の売上とある(前述富士通総研調査では55.5%)。ただしいずれも1999年の発表資料。2000年に入って、古くからの参入企業を中心に前年まで以上の急激な伸びをしているという話も多く、いま同様の調査を行えば結果は違ってくるかもしれない。

■顧客の少ない日本のオンラインショップ、米国でのECサイト運営コストは27万5000ドル
 日本のECサイトの運営体制は、従業員が1人のところが過半数を占めている。月間平均注文件数が50件未満となっているところが58.1%となっており、顧客数の少なさが収益性に影響しているものt想像される。
 米国の場合を見ると、shop.orgが調査した221のオンラインショップのうち、利益を出しているのは38%だったという。開設後1年以上たっている企業では半数で利益を出していた。
 経費面では、構築費用が多額であることが目立つ。全米広告主協会の調べによれば、ECサイト構築の平均コストは83万6000ドル、運営コストは年間100万7000ドル(給与・一般管理費は含まない)となっている。Gartner Groupの調査によれば、ECサイトの構築費用を平均100万ドルとした上で、うち79%は人件費関連だとしている。

■顧客獲得コストは1人40ドル、2000年に入って改善
 shop.orgの発表によると、顧客一人あたりの獲得コストは、1999年第4四半期の71ドルから2000年第1四半期は45ドル、第2四半期は40ドルと大幅に改善している。もっともこれは広告をテレビからオンライン広告などに移行したためといい、1999年第3四半期の35ドルよりはまだ高くなっている。
 ちなみに、TheStandard誌が伝えるマッキンゼー社の分析結果によれば、新規顧客の獲得コストは1.92ドルから980ドルで、平均は250ドル。顧客維持コストは平均1931ドルという。新規訪問者が購買まで至る確率は4.7%、顧客が再購買する確率は30.2%という。
 オーディエンス調査の結果から、訪問客のうち購買に至る比率を示すコンバージョンレートを確認すると、Nielsen//NetRatingsによればパーソナライゼーション機能のついたサイトで高く、Amazon.comがトップで8.30%となっている。

【16】BtoBによるEC市場規模

■10兆円を超えた日本のBtoB市場、2003年には100兆円超
 平成12年版通信白書によると、1999年の日本のインターネットコマース中間市場規模は14兆4298億円になったという。2003年には103兆4000億円規模になると予測している。
 セグメント別では、1998年のデータになるが、通産省などによる「日米電子商取引市場規模」に数字があがっている。電子・情報関連製品、自動車・自動車部品で高い。
 なお、これを全取引におけるECの割合、つまり電子商取引化率でみると、1999年は2.2%、2003年に11.2%と予測している。

■米国では2000年3360億ドル、調査会社によって差も
 Jupiterによる予測によれば、米国のBtoB市場は2000年が3360億ドル、2005年には6兆ドルを超えるとしている。一方、BostonConsultingによれば、2000年が1兆2000億ドル、2004年には4兆8000億ドルとしている。どのあたりまでを統計の範囲に入れるかなどによって差がでてきている。
 Forresterでは2000年の市場を4062億ドル、2004年で2兆6955億ドルとしているが、セグメント別に見ると、日本と同様コンピュータ及び電化製品が高く、現在はまだ低い自動車が今後2004年にむけて急拡大するとみている。
 電子商取引化率では、先のJupiterによる推計値をもとにするなら、2000年で3%であり、日本との差はそれほど大きくない。

■今後の成長が期待されるeMarketplace(電子商取引市場)
 Forresterの予測によると、今後市場が拡大するBtoB市場のうちでも、牽引する役割を果たすのが取引情報を仲介するeMarketplaceを通した売上だという。2000年段階では取引先企業との直接やりとりによる売上がBtoB市場の86.5%を占めていたが、2004年には47.4%に縮小し、変わって過半数を電子商取引市場を通した売上が占めるようになるとしている。
 Yankee Groupでも、2兆7800億ドルと予測している2004年のBtoB市場のうちの8500億ドル(30%)が電子商取引市場によるものであるとしている。Gartnerの発表では、1999年の電子商取引市場売上は4億9760万ドルとしている。

【17】インターネット広告市場(1)

■米国のインターネット広告市場は急拡大、1999年は46億ドル市場
 米国のインターネット広告市場は、1999年に急拡大した。IABの調査によれば、1998年の19億ドルから1999年の46億ドルへ、前年比2.5倍近い数字になっている。2000年第1四半期は前年第4四半期からさらに伸び、20億ドルに迫る勢いとなっている。
 2000年第1四半期のネット広告種類別のシェアを見てみると、バナー広告が52%のシェアと依然中心であることには変わりないが、リッチメディア広告やキーワード広告など、種類の多様化も市場を拡大させている要因であると指摘している。
 eMarketerによる予測では、米国のインターネット広告市場は2000年61億ドル、2002年には100億ドルの壁を超え135億ドルに達するとしている。この時点での全広告市場に占めるインターネット広告の比率は5.2%にのぼるという。
 世界規模での数値をJupiter Communicationsの発表に見ておくと、2000年の米国インターネット広告市場は53億9000万ドル、世界全体で70億2700万ドルで、米国の占める割合は77%となっている。2005年には277億ドル規模になり、米国の占める割合は61%まで低下すると予測している。
 なお、Forrester Researchでは2004年の世界のインターネット広告市場を330億ドル、うち220億ドルが米国だと予測している。

■日本の1999年度は241億円、2000年度は500億円を超える
 電通の発表によれば、日本のインターネット広告市場は、前年比2倍強の241億円に達した。広告主の増加とともに、有力サイトへの出稿希望が急増したとしている。全体の広告市場が前年比98.8%と伸び悩んだ中、成長率は突出している。もっとも、この時点での全広告市場に対する構成比は0.42%で、米国と比較するなら、ようやく1997年レベルに達したといったところ。
 2000年度の広告市場は、当初369億円とされていたが、その後500億円と上方修正されている。2002年には1000億円を突破するものと考えられている。

■伸びる電子メールマーケティング、2001年にはネット広告市場の1割に
 eMarketerによると、米国での電子メールによる広告市場は1999年、9700万ドルだったという。2000年には2億8900万ドルになると予想され、2003年には20億ドルに迫るとしている。これとともにインターネット広告全体に対する電子メールによる広告が占める割合は増加し、2001年には10%に達するものとしている。
 Jupiter Communicationsでは1999年の市場を1億6400万ドルとし、2005年には73億ドルと予測している。この場合、米国のダイレクトメール市場の13%を占めることになる。市場の拡大に伴ってユーザが受け取る広告宣伝目的のメールの数も増加し、1999年は年間40通だったのが、2005年には1600通になるだろうとしている。私信等もまた1999年の年間1750通から2005年の4000通に増えるから、その中でいかに気づいてもらえるかが課題だと指摘している。

【17】インターネット広告市場(2)

■オンライン広告の平均予算は190万ドル、1社あたりの予算増加が市場を拡大
 米広告主協会の調査によると、1999年にインターネット広告を出稿した企業は64%で、前年度よりも3ポイント増加しただけとなった。一方で、広告予算は平均190万ドルとなっており、前年の3倍。1社あたりの予算増加がインターネット広告市場を拡大した格好だ。
 インターネット広告の製作費用は平均44万1000ドル。スポンサーシップなど費用のかかる広告が増えたため、前年より51%の増加となった。

■伸びるBtoB分野の出稿、1社あたり毎月5万ドル前後を投資
 Jupiter Communicationsのレポートによれば、拡大するインターネット広告市場の中でも伸びが目立つのがBtoB分野。インプレッション(表示)数をみると、全体の伸びに比べて、BtoB分野では四半期ごとに1.5倍から2倍と際立って高い伸び率を見せている。1社あたりの広告予算も、毎月5万ドル前後で、増加傾向にある。
 AdRelevanceのレポートから、2000年第2四半期のインプレッション数シェアをみると、もっとも多いのはWeb媒体の37.1%、ついで小売の22.7%、金融サービスの15.3%と続く。BtoBはそれに次いで6.5%となっている。
 Nielsen//NetRatingsが発表した2000年6月度のバナー広告リーチ(一定期間内に当該広告を目にした人の割合)ランキングでは、日本ではYahoo!が圧倒的に多く、米国ではBonziSoftwareがトップとなっている。バナー広告の出稿は、まだオンライン専業企業のほうが積極的だと指摘されている。

■広告を受け付けているサイトも増加、CPMは34ドル前後
 OnlineAdvertisingReportによると、広告を受け付けているサイトは毎月4%前後ずつ増加している。伸びが目立つのはコミュニティ分野やBtoB分野など。露出1000回あたりの広告費用を意味するCPMは34ドル前後で推移しているとしている。

【18】インターネット広告の効果

■クリック率は年々減少2000年に入って0.4%前後に
 バナー広告のクリック率は、1%を超えることもあった1997年以前からは様変わりし、毎年下降傾向にある。1999年は0.5%強あった前半から後半は下がっていき、ついに0.5%を切った。この傾向は2000年に入っても変わらず、0.4%を切る月も出てくるようになっている。
 富士通総研からのケーススタディに、オプトインメールにおけるクリック傾向がまとめられている。電子メール広告の場合、クリックするのは配信された当日ないし翌日までがほとんどであることがわかる。

■コンバージョンはクリックから30分未満が過半数
 クリックしてから購買行動などへ移る「コンバージョン」は、Online Advertising Reportによると60%まではクリック後30分未満で行われているという。クリック後の意思決定は短時間のうちに行われていることになる。
 一方で、コンバージョンは、必ずしもクリックで誘導しなくても期待できる。同レポートによると、コンバージョンのうち、広告をクリックした人からのものは24%だったのに対し、広告をクリックしなかったものの、見てはいた人からのものが32%あったという。広告のブランディング効果を推測される結果である。
 実際、Dynamic Logicのレポートによれば、広告の表示回数を増やすと認知率もあがっていることが示されている。

■バナー広告の利用期間は平均5.5週間
 AdRelevanceの調査によれば、バナークリックの表示期間は、1週間が23.7%と多く、以下期間が長くなる後とに短くなり、平均は5.5週間だという。

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