市の財産の分類とその設置及び廃止

 「議会選出監査委員は必要か?」「指定管理者制度について考える」に続いて、12月議会に提出されている議案から、市の財産に関するものを取りあげます。

市の財産の分類

 前提として、市の財産はどのような区分になっているかというと、次の図のように整理されます。

(指定管理者制度運用ガイドラインより)

 市の財産は、大きくは公有財産(不動産)とその他(物品、債券、基金)に分かれる。
 このうち不動産は行政財産とそれ以外(普通財産)に分かれます。そして行政財産には公用財産(庁舎のように市が直接利用するもの)と公共用財産(図書館のように住民が利用するもの)がありますと。

 たとえば学校は行政財産ですが、廃校になると普通財産になります。普通財産になると民間に貸し付けたり売却したりできるようになります。とはいえ、賃貸借契約の期間に限りがあり、長期的運用には向きません(財務省「普通財産貸付事務処理要領」)。

公の施設を設置するには

 前述の分類のうち公共用財産を専門用語で「公の施設」といいます。根拠となるのは地方自治法にある次の定めです。

普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。

(地方自治法第244条)

 続く条文で、設置のために必要な手続きが定められています。

普通地方公共団体は、法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、公の施設の設置及びその管理に関する事項は、条例でこれを定めなければならない。

(地方自治法第244条の2)

 公の施設を設置するには、条例が必要であるということですね。これが、「指定管理者制度について考える」の最後で少し紹介した、「設置管理条例(せっかん条例)」です。
 今回の議会では、新しく二つの設置管理条例が提案されています。

議案110号 丹波市石生駅西口連絡通路条例

 石生駅の西口側、JRの跨線橋から先に、階段で降りられるようになっていますよね。下には喫茶店が入っていたりして。その部分を、公の財産と位置付けるための条例です。
 これまでどうなっていたかというと、普通財産という位置づけになっていました。

 実のところ、列車を利用される市民の方が利用される空間なので、本来的には「行政財産(公の財産)」であるべきだったかもしれません。これまでは2階で券売業務を市からの委託で行っており、その一環として維持管理もされていました。
 このほどICOCA改札が設置されることになり券売業務も無くなることから、あらためて適切な位置づけにするとのこと。

議案140号 丹波市立氷上回廊水分れフィールドミュージアム条例

 こちらは3月にオープンする施設の設置管理条例です。

 この施設については、従来「水分れ資料館」として「丹波市立歴史民俗資料館条例」の中で位置づけられていました。今回、そこから独立させて、単独条例で定めるものです。
 従って、この条例の附則で、「丹波市立歴史民俗資料館条例」の施設一覧から水分れ資料館を削除することも定められています。

 公の施設であることはこれまでと同じく変わらないけれど、根拠とする条例が変わってくるということですね。

公の施設を廃止するには

 では、逆に廃止する場合にはどうしたらいいのでしょうか。今回、関連する議案がありますのでご紹介します。

議案112号 丹波市立山南農業者体育施設の廃止
議案113号 丹波市立山南中央公園の廃止
議案114号 丹波市立山南B&G海洋センタープールの廃止
議案115号 丹波市立スポーツ施設条例及び丹波市立市民プール条例の一部を改正

 山南農業者体育施設以下3施設を廃止し、統合山南中学校の用地等にするための条例です。なお、工事が始まるギリギリまで利用いただけるようにするため、施行日は来年の6月1日とされています。
 これら3施設は「公の施設」です。廃止するにはどうするか。冒頭で紹介した地方自治法第244条の2の2項で以下のように定められています。

2 普通地方公共団体は、条例で定める重要な公の施設のうち条例で定める特に重要なものについて、これを廃止し、又は条例で定める長期かつ独占的な利用をさせようとするときは、議会において出席議員の三分の二以上の者の同意を得なければならない。

(第244条の2)

 条文に「条例で定める特に重要なもの」とありますよね。この条例というのが、「丹波市議会の議決を経なければならない重要な公の施設の利用等に関する条例」で、水道施設から住民センターやスポーツ施設、市営住宅や駐車場まで18項目が定められています。
 つまりこれら3施設を廃止するにあたっては、出席議員の3分の2以上の賛成を必要とする「特別多数議決」によらねばならないというわけです。

 余談ですが、議事進行上は、通常、全員賛成が見込まれる議案は議長が「異議ありませんか」と尋ね「異議なし」の声をもって全員賛成とする略式の採決が行われます。しかし特別多数議決の場合は、念のためということでしょうか、起立をもって採決を行います。

 なお、議案115号は、これら3施設の「設置管理条例」です。他の施設と一括して定められていますので、一覧からこれら3施設を削除するという「一部改正」で対応することになります。

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