コロナ禍は本当にテレワーク促進のきっかけになるだろうか?

 その昔、zaurusという携帯端末がありました。SHARPが出していたもの。学習コンテンツや動画など、モバイルでいろいろできました。

 そのユーザー向けにメールマガジンも配信されていて、「mobilebrain」という媒体に毎週、ビジネス統計を紹介する記事を書いていました。ぼくの書いた記事に編集担当の女性が突っ込むという形式。文中にある「(あ)さん」というのがその女性ですね。
 それにしてもそうか、週1の連載をこんなところにも持っていたのか。すっかり忘れていました。他にも週1連載は持っていたし、日刊の連載もありました。月刊誌にも書いていたなぁ。

 新年号に「今年を予想する統計データ」というお題で書いてくれと頼まれて、選んだのが「テレワーク」でした。
 これから広がって欲しいという期待を込めて書いたものですが、現実にはその後も20年間ぼちぼちって感じで、定着は遅かったですね。

 新型コロナウイルス禍のもとで、今回、テレワークが一気に広がりました。
 気になるのはそれが定着するかどうかということです。

 ぼくは今のところ悲観的。ただ「新しい生活様式」の中で普通の制度として取り入れられていけば、可能性が無くはない。
 出社は週に1日でいいよ、というくらいの制度化がされて、それなら住まいは普段はゆったりできる田舎において、週1回都市に出かけていくくらいのライフスタイルがいいなと、そんな選択が普通にできるようになってほしい。

 けっきょく、オフィスだけの問題というより、ライフスタイルを変えていこうというみんなの意識がないと、テレワークってこの先定着しないですね、きっと。そんな思いを抱きつつ、期待も込めて。

(2020年追記)


テレワーク人口は2005年に445万人


「mobilebrain」2001年新年特集

 あけましておめでとうございます。毎週木曜日に「今日の統計データ」を執筆させていただいています。ふだんはそのときそのときにタイムリーなデータを取り上げてご紹介させていただいています。自分や皆さんにとって何かを示唆したり勇気づけたり楽しめたりという統計を優先していますので、ときには(あ)さんからサンプルの代表性への鋭い突っ込みも。あまりにアヤシイ統計ははずしていますが、まあそのあたりはご勘弁を。
 今回編集部からいただいたテーマは、2001年を予想する統計データ。うーん、なかなか難しいことをおっしゃいます。たとえば経済企画庁の発表によると、来年度の国内総生産は実質1.7%の成長、完全失業率は4.5%と今年度の4.6%よりほんの少し改善。自律的回復軌道をたどるとされています。しかしそんな数字をいくらあげても、どうも実感として身にしみないし、なにより何かを示唆したり勇気づけられたり楽しめたりしません。

 そこで。迷ったあげく選んだのが、日本テレワーク協会によるこの調査でした。発表そのものは去年の7月なので古いのですが、2005年までの予測も入っているのでお許しください。
 この調査、テレワークについての企業とワーカーの実態を調査し、テレワーク人口を推計・予測したものです。ここでいうテレワークというのは、オフィスに集合せず遠隔地で働くワークスタイルのことをいいます。形態としてはおおきく3つが考えられます。ひとつは、自宅にいながら仕事をする在宅型。これは一種のSOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)ともいえますね。もうひとつは、サテライトオフィス型。これはたとえばベッドタウンの近くに事務所を作り、そこに出勤して働く形態を言います。そしてもうひとつが、携帯情報端末を利用して移動先でも仕事をするモバイル型。読者の中には、ザウルスを駆使してこのモバイル型のテレワークを行われている方がいらっしゃるかもしれません。

 さて、日本のテレワーク人口、2000年段階で246万人だったといいます。5年後には445万人、1.8倍になるという予測です。みなさんはこの数字をどのように思われるでしょうか。ぼくは正直、伸びが低いな、という印象です。管理面やサテライトオフィスに対するコスト面などでなかなか踏み切れない、というのが実情のようです。
 もちろん、すべてのサラリーマンがテレワークになる必要はないでしょう。でも、就職しようと思えばどうしても都心部ないしその周辺に移動せざるを得ないという現在の状況は変わってほしいなと思います。就職という選択をするとき、都心のオフィスに勤めてもいいし、週2日は出勤してあとは在宅という形態でもいいし、住居近くのサテライトオフィスに勤める形でもいい。そんな、選択の幅が広い世の中になってほしいのです。
 今の世の中は、まず仕事を決めて、それにあわせて住居を決めたり子どもの保育先を決めたりしています。そうではなく、まず理想とするライフスタイルを選択して、それに応じた勤務形態が選べるような世の中になるとすてきだと思いませんか。

 今回は、新世紀、そんな世の中に向かわないかな、という願いを込めて、この統計データを選ばせていただきました。春頃には田舎に引っ越す予定です。代表をつとめる会社は東京にあるので、いわば典型的なテレワーク。そんな自分へのひそかな応援の意味もこめて。

追記:
1月22日には自分のサイトでこれまで書きためたきたコラムが『ここまでわかった!? 最新雑学の本』として講談社+α文庫より出版されます。よろしければお手にとっていただけると嬉しいです。(小橋昭彦)

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