ポストコロナにおける自治体の「新常態」

 緊急事態宣言が解除され、徐々に日常を取り戻しつつある今。

 第二波への警戒を怠ることなく、市民には「新しい生活様式」が求められています。今回の経験を通して、社会や世界のあり方が変わりつつあるとも言われます。

 現在も緊急的な支援を必要とされている企業なり市民の方への配慮を継続する一方で、地方自治体としては、新しい社会の動きや価値観を視野に、施策の転換に備えなくてはなりません

 私が所属する丹波市議会の会派「丹新会」では、こうした認識のもと、市長に対して「ポストコロナ『7つの新習慣』」として、5月27日、7分野25項目の提言を行いました。
 新しい生活様式や価値観の変化に応じた、いわば自治体にとっての「新常態(ニューノーマル)」を指摘した内容です。

ポストコロナにおける地方自治体の「新常態(ニューノーマル)」

 私たちは今回の経験を通して何を学んだでしょうか。また、これからどう備えるべきでしょうか。まずは大きく7つの視点を提示しました。

【1】複合災害を前提として備える
今回の事態が起こる前から「災間時代」が唱えられていました。それは主としてやがては発生する東南海大地震や繰り返し起こる豪雨災害などを前提としたものでした。しかし感染症はここに新しい検討課題をつきつけました。複合災害を前提に「災前」の備えをしなくてはならないということです。

【2】仕組み化で医療を支える
医療のキャパシティという見方はこれまで前面に出ていませんでした。今回の事態は、感染症患者の受入れを前提にした受入体制は意外に脆弱で、しかもそれが崩壊すると一般患者の受入れにまで影響することを明らかにしました。これに対処するには単に医療だけではなく、市民も一体となった地域としての「仕組み」が必要であることを学びました。

【3】経営のしなやかさ(レジリエンス)を推進する
危機はいつ訪れるか分かりません。「減退」ではなく「蒸発」と言われるほどの市場環境の変化に対しては、単なる「強さ」ではなく、打たれても回復できるしなやかな(レジリエントな)経営が必要です。また、産業構造において物流や小売、介護や子育て支援などの「エッセンシャルワーカー」が社会を支えていることも明らかになりました。自治体は市場創造型の産業振興に加え、レジリエンスの強化を視野に入れた産業振興策をとらねばなりません。

【4】分散型社会に適合した企業誘致
人の交流を介して世界に拡がる感染症を前に、国際的なサプライチェーンのもろさ、集中型オフィスのもろさがあぶりだされました。製造業の国内回帰やリモート型の立地、広いオフィスへの転換などが進んでいきます。分散に向かう企業志向を前提にした企業誘致策が求められます。

【5】新しい生活様式に適した移住施策
ステイホームが言われる中、家族で過ごす価値の見直しやフリーランスの再評価が進みました。さらには危機時に支援してくれる関係人口の活躍には目を見張るものがありました。都市部への人口集中の危うさも指摘されています。「新しい生活様式」を移住施策に活かさなくてはなりません。

【6】市民からの「広聴力」を磨く
生活が脅かされる中で、リスクコミュニケーションの成否が市民の安心感や共感に直結し、首長の評価を決めました。これまで自治体の広報は「決まったことを伝える」ことに重点が置かれてきましたが、リスク時において重要なのは「市民の納得と行動を促す」ことです。そのためには市民の気持ちに寄り添うことが欠かせません。「広報」の前に「広聴」あり。現場の声を取り入れる仕組みや日常的に情報経路を維持しておくことが必要です。

【7】学びを生涯止めない
「三密」を避ける必要性と対策を考える中で、学校における学びはもちろん、芸術などの教養面でも、密集を前提としてこそできるものであったとあらためて気づかされました。一方で、危機前から言われていた100年人生、複線型人生のための「学び」は加速します。「Face to Face」の一方で、オンラインによる「Side by Side」の工夫を加え、生涯とまることのない「学び」スタイルを築かねばなりません。

では、それぞれの視点においてこれからの自治体はどのような施策が求められるか。次のページで今回の提案をご紹介します。

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