まちなかホテル決戦

 6月議会、これまで議論を重ねてきた「まちなかホテル」事業がいよいよ最終段階、というか区切りの提案が出ています。ま、決戦とタイトルするのはおおげさだけど。

 このブログでの関連投稿は次の通りです。

支所を柏原住民センターに、旧庁舎はホテルとし委託管理に

 今回の議会に上程されている関連議案は次の2議案です。

  • 議案66号「丹波市支所設置条例の一部を改正する条例の制定」
  • 議案75号「丹波市立旧柏原町役場庁舎条例の制定」

 66号は、柏原支所を現在の旧柏原庁舎から柏原住民センターに移しますという内容です(具体的には支所設置条例内の柏原支所の住所を変更する条例)。「まちなかホテルの迷走(への助走)」でも述べましたが、長年の懸案にいよいよ決断です。
 これは最近になって地元団体から柏原住民センターへの移設を希望する要望書が出てくるなど、地域の環境が整ってきたと判断されてのこと。

 急な提案という声もありますが、かねて議論されてきた内容ですし、異常気象による災害が相次ぐ近年、緊急避難所である柏原住民センターと支所を一体化する必要も感じており、ぼくはそうあるべきと考えてきました。
 地元説明をていねいにという点にはうなづけるところがあるにせよ、柏原地域全体を考えてご理解いただければと願います。

 75号はそうして空いた旧柏原庁舎をホテルに改修し委託管理に出しますよという条例です。
 本来的には、66号が可決されてはじめて旧柏原町庁舎が空くわけで、順序としてはどうかなとも思いますが、可能なことではあり、一気に片をつけることも必要でしょう。
 対象施設は以下の通り。

  • 旧柏原町役場本庁舎
  • 旧柏原町役場東庁舎
  • ふれあい広場
  • 公衆トイレ
  • 駐車場

 ふれあい広場、公衆トイレ、駐車場というのは水道庁舎を解体した後に整備される予定です。
 ここで行う予定の業務は次のとおり。

  • 市民が憩い、交流する場の提供
  • 丹波市の多彩な魅力の発信
  • 観光振興に関する「情報発信」「コンシェルジュ」「体験交流」の提供
  • 宿泊
  • 移住定住相談窓口

 このうち、移住定住相談窓口を除く部分を委託管理に出します。
 ホテルを5室作る、1室あたりの上限は一人当たり35,000円として、管理事業者が設定できる、このあたりは良いとして、提案された条例でわかるのはそうしたおおざっぱなところまで。
 もう少し詳細な資料が欲しいところです。

DBOという丹波市ではじめての手法を採用

 詳細な資料が出ていないのには、仕方のない面もあります。というのは、今回の旧柏原町庁舎、DBOというめずらしい方法が予定されています。

 DBOとはDesign-Build-Operateの頭文字をとったもの。日本語にすれば「設計-施工-管理」ですね。これらすべてを一括して公募に出すってことです。
 通常の公共事業ならば、まず設計を入札に出し、その設計に基づいて今度は建設工事の入札です。そして建物ができたら運営管理事業者の公募を行う。

 これを、すべてまとめて提案公募すると。8月頃には公募したいと聞いています。
 これはやはり、まちなかホテル事業という事業の特殊性ゆえです。たとえば管理段階では単にひとつの建物ではなく、複数の建物を一体的にホテルとして運営することが求められます。

 通常、ホテルとしては7室が採算ラインといいます。旧柏原庁舎だけでは5室しかありませんから、あと2室は応募事業者が工夫して準備する必要があります。
 でもその2室をどこでというのは行政はタッチしない。あくまで民間で開発してほしいと。そういうことになります。

 こうなると、旧柏原庁舎の改修設計だけ発注していたのでは、まちなかホテル全体の機能を見通さない設計になったりする可能性がありますね。
 これを解消するのが、DBO方式というわけです。

田原邸に行政はタッチせず、民間に期待

 あと2室は行政はタッチしないと書きました。
 この事業の経緯に詳しい方は、「あれ、田原邸があるのでは」と思われるのではないでしょうか。実は田原邸については、行政として取得することはあきらめたということです。
 それがわかるのは、今回の議会に出された報告。

  • 繰越明許費のうち実際の繰越額
    U・Iターン推進事業 31,000,000円→5,000,000円(減額)

 繰越明許というのは年度内に使えなかった額を翌年度に繰り越すものですが、上記のように、U・Iターン推進事業の繰越として3月議会で認めていた3,100万円のうち、2,600万円が繰り越されていません。
 この2,600万円が、田原邸の購入額として見込まれていた予算なのです。

 田原邸は武家屋敷としての価値があるため行政が土地のみ取得して建物は譲渡を受け、その後民間に改装や管理を任せるということでした。
 これに対して、民間ならもっと安く買える、土地という公有財産を増やしてまで行うことかといった意見がありました。

 ただ、陣屋の向かいですし、景観保全という意味でも公益性があると考えて予算化を認めていただけに、今後の行方が気がかりです。
 なんとか取り壊しにならず、民間力で取得し活用されることを祈ります。

水道部庁舎は解体、住民センターでの業務は令和2年4月6日から

 今回の議会に上程されている補正予算の中では、次の費目が関連する予算です。

【歳出 】
組織再編等施設整備事業 19,506,000円(柏原支所移転9,200万円等)
旧柏原町役場庁舎整備事業 11,469,000円(設計監理委託料)

【繰越明許費 】
組織再編等施設整備事業 18,292,000円(水道部庁舎解体工事費用)

【 債務負担行為 】
組織再編等施設整備事業 12,190,000円(引越及びシステム変更:4/6移転のため)
旧柏原町役場庁舎整備事業 115,495,000円(ホテル化に伴う改修費)

 分かりづらいですね。まず、現在の水道部庁舎を解体する(水道部は春日庁舎に引っ越します)。年度内には終わらないから、工事費部分は「繰越明許費」として来年度に持ち越されます。

 旧柏原町役場については、改修の設計監理として1,146万円。これは今年度中に完了する予定です。工事は来年度になりますが、先ほど紹介したようにDBO方式ですから、工事費も合わせた契約になります。従って、改修費として見込まれる1億1549万円分を翌年度以降に支出を予定する債務負担行為として計上して、今年度に想定される契約に盛り込めるようにしているわけです。

 また、柏原住民センターへの引っ越し予算は1,219万円のうちの434万円。他に水道部移転に615万円等が含まれます。
 これが債務負担行為に入っているのは、今年度中に取り掛かるものの、業務開始が来年度の4月6日(月)からになるからです。事務の都合で週末をはさみたいからだそうです。

 なお水道部庁舎跡は公園にする計画ですが、予算化は来年度です。公園整備費の今の見込み額がトイレを含めて4,000万円を超えていて、これはちょっとかけすぎのようにも思いますね。このあたりは、早めに指摘しておく必要があります。

 気になるのは、公園関係は予算が担保されていないのに、先に紹介した75号議案の条例に「ふれあい広場」「公衆トイレ」「駐車場」が入っていること。
 地方自治法第222条には下記のようにあるのだけど、大丈夫かな。

普通地方公共団体の長は、条例その他議会の議決を要すべき案件があらたに予算を伴うこととなるものであるときは、必要な予算上の措置が適確に講ぜられる見込みが得られるまでの間は、これを議会に提出してはならない。

【6月24日追記】
 最後の部分、審議を経ての結論としては、「今回提案されている設置管理条例そのものは予算が伴うものではないので問題ない」との見解でした。
 なるほど、一応納得です。ただ、この条例に基づいて公募する事業者との契約には、予算の裏付けのない「ふれあい広場」等の管理についても含まれるわけで、そのあたりは、なんらかの留保条件(予算が通ることを前提とする等)をつけることになるのかとは思いますが、やや釈然としない部分もあります。

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