子どもの脳と仮想世界―教室から見えるデジタルっ子の今

教室から見える、とあるように、著者の戸塚さんは長年教育の現場で子どもたちに接してきた教師であり、ITを利用した授業でも先進的な取り組みをしてきた人。 その経験をふまえた印象的なエピソードが第四章に描かれている。 それは、マコたんの話。

日本人の意識と行動―日本版総合的社会調査JGSSによる分析

日本版総合的社会調査(JGSS)というのは、2000年から行われている調査。 世帯構成や職業などのほか、政治意識や人生観、友人関係にいたるまで、多岐にわたる項目について尋ねる、ものすごい内容だ。サンプル数はおよそ5000で、6割くらいの回収率という。 調査結果 続き …

地域再生システム論―「現場からの政策決定」時代へ

現場からの政策決定。 本書では、端的にはそれは「構造特区制度」を意味している。 地域の主体から提案を受けつけ、それらは「価値がある」ものという前提に立ち、できない理由ではなく実現する方法を探るという基本で行われ、審査情報も公開していく。 その特区制度の特徴や、 続き …

<私たち>の場所―消費社会から市民社会をとりもどす

副題には、消費社会によって市民社会が奪われてしまったという含意がある。その思いが今の自分にすごくフィットしていたのが、本書を手にした理由。 市民社会、それは「あなたと私」の相互関係を調整する空間。国家でも市場でもない「第三の領域」だと、バーバーはいう。 彼は市 続き …

地域づくりの新潮流―スローシティ/アグリツーリズモ/ネットワーク

副題に並ぶ3つのキーワード。いずれも気になるテーマである。 まずはおさらいしておこう。スローシティ。この母体はご存知「スローフード運動」だ。スローフード運動は、1986年にマクドナルドがローマのスペイン広場に進出するという計画を聞いたイタリアのジャーナリスト、 続き …

連帯と承認―グローバル化と個人化の中の福祉国家

日本はどこに行こうとしているのだろう。グローバル化、個人化を前提とした改革が進められた後、格差の解消が言われる現在は、あるいは福祉国家であろうとしているのか。そんな思いから、これはまさに副題にひかれて手にした本だ。 福祉国家という言葉を、精密に理解していたわけ 続き …

テレビだョ!全員集合―自作自演の1970年代

何度かテレビカメラの前に立ったことがある。 「カメラ目線ですか」「いえ自然な様子で」というわけで、あえてテレビカメラを見ないようにしてしゃべる、ところが、テレビカメラのある風景を普通に考えれば、むしろカメラが気になってそちらを見るほうが自然だったりする。とする 続き …

近代論―危機の時代のアルシーヴ

アルシーヴって言葉は知らなかった。安藤さんによれば、フーコーが『言葉と物』で見出し、『知の考古学』で発展させた概念だという。もともとは古文書や公文書、あるいはそれらを保管しておく施設を意味していたそうだが、フーコーはそれをあらゆる書物を混在させたまま収蔵すると 続き …

地域主権型道州制―日本の新しい「国のかたち」

まちおこしをやっていると、ときどき無力感にとらわれることがある。なるほど、観光収入を増やしたり、農産物のオンライン販売をしたりと、一定の効果を生む事業はあるだろう。成功している地域も少なくない。しかし、それが持続的なまちおこしにつながるのか。結局、大きなところ 続き …

さらば、“近代民主主義”―政治概念のポスト近代革命

副題にあるように、ネグリがいわば自らの思想を総ざらえしながら、現代における政治的概念を読み解いていく。それが「革命」であるのは、ぼくたちが慣れてきた「近代」の枠組みを破壊し、その後(ポスト)にくる枠組みの構築を目指しているからだ。 ところで、現代の社会を位置づ 続き …